2024年05月02日 18:56
U-23日本代表の大岩剛監督が現地5月2日、U-23アジアカップ決勝・ウズベキスタン戦の前日会見に出席した。 2016年以来、4大会ぶりの優勝へ向けて指揮官は会見の冒頭、以下のようにコメントした。 「決勝に進めて非常に嬉しく思います。そして、素晴らしい決勝戦をしたいと思っています。これはこの大会中、ずっと言っていますけど、23人が非常に良いコンディションでいますので、しっかりと勝利にフォーカスしながら、準備をして臨みたい」 また大岩監督は、アジアのレベルにも言及。「アジアのレベルは非常に各国上がっていると思いますし、それは対戦していてものすごく感じるところ」と語った。 【PHOTO】U-23アジアカップ準決勝イラク戦に集結したU-23日本代表サポーター! そのうえで、「ただ日本が安定して勝ち上がるところに非常に重要だと感じていますし、我々のタスクであるこのアジアでしっかりと勝つというところは、日本サッカーとして引き続き今後もやっていくべきことだと思います。それを継続するために、明日の決勝戦も非常に良いゲームをしたい」と強調した。 決勝は日本時間5月3日の24時30分キックオフ予定だ。 取材・文●手塚集斗(サッカーダイジェストWeb編集部)
2024年05月17日 13:40
京都サンガ F.C.は5月17日に、6月1日付で大熊清氏のゼネラルマネージャー(GM)就任を発表した。
大熊氏はこれまでFC東京や大宮アルディージャ、セレッソ大阪の監督を歴任。その後はC大阪の統括部長を経て、2019年には清水エスパルスのGMに就任。2023年12月に清水の取締役(ゼネラルマネージャー兼サッカー事業本部長)を退任していた。
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クラブの公式サイトを通じて大熊氏は、以下のようにコメントを発表している。
「京都サンガ F.C.のスポンサー、ファン・サポーターの皆様、この度、京都サンガ F.C.のゼネラルマネージャーに就任することになりました大熊清です。
伝統と歴史あるチームに大変光栄なお話をいただき感謝いたします。チームが闘う集団へ更に進化するために、フロント、スタッフ、選手と一丸となって仕事に取り組む所存です。スポンサー、ファン・サポーターの皆様に愛される強いチーム作りをクラブとともにやっていきたいと思います。今後もご支援・応援をよろしくお願いします」
京都は今季ここまで、14試合消化時点で2勝3分9敗の勝点9。現在は4連敗中で、20チーム中最下位と低迷している。
構成●サッカーダイジェストWeb編集部
2024年05月17日 13:30
今季途中までは4冠の可能性もあったリヴァプールだが、EFL杯を制して以降は失速。ヨーロッパリーグ、FA杯、プレミアリーグのタイトルは逃してしまった。
悔やまれる問題の1つがFWディオゴ・ジョタの負傷離脱だ。ジョタは今季3度も負傷で離脱しており、現在も4月22日のフラム戦を最後に欠場が続いている。
気になるのは今夏に予定されているEURO2024だ。ジョタはポルトガル代表で36戦12ゴールと結果を出しているアタッカーだが、2022年のワールドカップ・カタール大会は負傷のため参加できていない。これはポルトガル代表にとって痛手だったと言える。
ジョタ自身も今回のEUROに懸ける思いは強いはずだが、現状を見ればコンディションを整えるか微妙なところだ。英『Liverpool Echo』によると、ジョタも怪我続きの今季を嘆いている。
「今年の初めに膝に怪我をして、それからまた怪我をしてしまった。運が悪いね。特にチームが必要としてくれている時ほど、怪我にはイライラするものだ。僕たちはたくさんのタイトルをかけて戦っていたのに、プレイ出来ないのはね。(ピッチサイドから見ているのは)実際にプレイするよりも100倍ハードだよ」
ジョタが怪我に苦しむのはこれが初めてではない。今季も序盤から中盤にかけて良いペースで得点を重ねていただけに、今季も怪我が続いてしまったのは残念だった。
2024年05月17日 13:17
J2のベガルタ仙台は5月17日、GK林彰洋の交通事故を報告した。
クラブによると、16日の午前、自動車を運転していた林は仙台市内で自転車と接触。自転車の運転手は、同日に病院で検査し、軽度の打撲と診断されたという。林に怪我はない。
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クラブはお詫びし、林による速やかな連絡と、クラブとして引き続き誠心誠意の対応をすると報告。
そして、「同選手には厳重注意を行なっており、今後の再発防止に向け、クラブ全体で安全運転の取り組みを徹底いたします」と伝えた。
構成●サッカーダイジェストWeb編集部
2024年05月17日 13:16
サッカー欧州選手権(UEFA Euro 2024)に臨むフランス代表メンバー25人が16日に発表され、2018年のW杯ロシア大会(2018 World Cup)で優勝を経験したMFヌゴロ・カンテ(N'Golo Kante)がサプライズで復帰した。
2024年05月17日 13:00
03-04シーズン以来20年ぶりのプレミアリーグ優勝を狙うアーセナル。公式戦は1試合を残すのみだが、2位アーセナルが優勝するには19日に行われるエヴァートン戦に勝利した上で、首位のマンチェスター・シティがウェストハム戦に負けるか、引き分ける必要がある。アーセナルにとっては少し不利な状況だが、プレミアリーグのタイトルの行方は最終節まで分からない。
そんなアーセナルは来季24-25シーズンのホームユニフォームを発表した。このホームユニフォームには、89-90シーズン以来34年ぶりの変更点があり、クラブバッジではなくアーセナルの大砲のロゴのみがプリントされている。
プレスリリースは「この大砲は創設以来クラブの代名詞となっているアーセナルの歴史の不朽のシンボルを表しています。3 つのキットユニフォーム全てのこの大砲ロゴへの切り替えは 1 シーズンのみです」と伝えている。
アーセナルに所属する、ブラジル代表FWガブリエウ・マルティネッリは下記の声明を発表した。
「アーセナルに加入して以来、この偉大なクラブとサポーターにとって大砲のロゴがいかに重要であるか理解している。これは我々の精神を象徴するものであり、ピッチ上でこのユニフォームを着用できることに興奮している」
なお、5月18日に行われるウィメンズ・スーパーリーグの最終節でアーセナル・ウィメンFCの選手がこの新しいデザインの24-25シーズンのユニフォームを着用するようだ。
The Year of the Cannon ⚪️
Our new 24/25 Arsenal x @adidasFootball home kit is available now — Arsenal (@Arsenal) May 16, 2024
2024年05月17日 13:00
セビージャは16日、同クラブに所属するスペイン代表MFヘスス・ナバスが今季限りでクラブを退団することを発表した。
カンテラ時代を含めて、そのキャリアのほとんどの時間をセビージャに捧げた“カピタン”が、クラブを離れることを決めた。スペインメディア『マルカ』によると、J・ナバスがセビージャ退団を決めた理由は主に3つだという。1つ目は自らの精神的疲労。過去のセビージャはラ・リーガで上位争いを演じるのが常だったものの、直近2シーズンは残留争いに巻き込まれており、現指揮官のキケ・サンチェス・フローレス監督を含めて、この2シーズンで実に5名もの監督が指揮を執るという混沌状態が続いていた。J・ナバスはキャプテンとして、そして右サイドバックの主力としてチームを支えたものの、自身がチームを良い方向へ導けたとは感じておらず、危機的状況のなかでリラックスしているドレッシングルームの雰囲気も理解できなかったという。これらがJ・ナバスを心理面で悩ませたようだ。
2つ目は38歳という年齢面と、それに伴うコンディション面。特に直近数シーズンは腰の問題に悩まされており、自身が“セビージャの選手”として要求するレベルのプレーを発揮できないと感じていただけでなく、ピッチ上で楽しめない時間が続いていたとのこと。3つ目はセビージャの財政状況だという。J・ナバスとセビージャの現行契約は今季限りで満了を迎えるが、財政難に苦しむクラブはJ・ナバスになかなか新契約を提示しておらず、それどころか交渉の場も設けられなかった模様だ。このようなクラブの姿勢に不信感を抱き、今季限りで離れることを決めたと伝えられた。
『マルカ』は「自分の魂のチームがどこへ向かうのか、そして自らがその行き先を変えるために助ける力がないことに嫌気がさした。今や彼は、セビージャの歴史の1人、歴史に名を刻むレジェンドとなった」と退団の背景をまとめている。
J・ナバスは1985年11月21日生まれの現在38歳。スペイン南部のアンダルシア州セビージャ県にある基礎自治体のロス・パラシオス・イ・ビジャフランカ出身で、16歳で地元最大のビッグクラブであるセビージャのカンテラに入団した。2003−04シーズンのラ・リーガ第12節エスパニョール戦でトップチームデビューを飾ると、翌シーズンからは主力に定着し、スペイン屈指のウインガーとして名を馳せた。
2013年夏にははマヌエル・ペジェグリーニ新監督(現:ベティス)からの誘いを受け、マンチェスター・シティへ完全移籍。ペジェグリーニ体制下では右ウイングの主力として起用され、ジョセップ・グアルディオラ監督の就任後は右サイドバックとしてもプレー。4シーズンの在籍で公式戦通算183試合出場8ゴール35アシストを記録した。
2017年夏よりセビージャへ復帰。右ウイングだけでなく、直近の数シーズンはサイドバックとしても安定したパフォーマンスを見せ、2018−19シーズンからはキャプテンを務めた。セビージャに在籍した17シーズンで公式戦通算688試合に出場しているが、これはセビージャの歴代最多出場記録だ。39ゴール119アシストを記録した。同期間ではヨーロッパリーグ(前身大会のUEFAカップを含む)を4回、コパ・デル・レイを2回、UEFAスーパーカップを1回、スーペルコパ・デ・エスパーニャを1回と、合計8つのトロフィーを獲得したが、これもセビージャに在籍した選手としては歴代最多の数字だ。
また、セビージャに在籍していた2009年11月にはスペイン代表デビューも飾っており、“ラ・ロハ”が優勝を飾ったFIFAワールドカップ南アフリカ2010やEURO2012にも出場。これまでに国際Aマッチ通算で51試合出場5得点を記録している。今年3月のインターナショナルマッチウィークでも招集を受けており、今夏のEURO2024に出場する可能性も決して低くはない。
【ハイライト動画】セビージャの最新試合はこちらからチェック!
2024年05月17日 13:00
フェイエノールトの日本代表FW上田綺世について、元オランダ代表のウェズレイ・スナイデル氏が語っている。
上田は昨年の夏にベルギーのサークル・ブルージュからフェイエノールトに移籍。加入1年目の今季は、エースのサンティアゴ・ヒメネスの控えに回っており、途中出場が多いものの、ここまでリーグ戦25試合で5ゴール・1アシストをマークしている。
オランダメディア『FR12』によると、そんな25歳をスナイデル氏はサッカー番組『Veronica Offside』で批評。かつてアヤックスやレアル・マドリー、インテルなどで活躍した名手は、以下のように述べている。
【動画】フェイエ上田綺世の3戦連発弾!
「私は決してウエダのファンではない。ただ、彼はコンスタントに試合に出ていないのでリズムを欠いているのかもしれない。アルネ・スロット監督は『彼が頻繁にプレーすれば、非常に優れたストライカーになるだろう』と思っているのかもしれない。でも、それが全てだとは思わない。彼はまだ私を魅了できていないよ」
また、同番組に出演していた元オランダ代表FWのヴィム・キーフト氏も「ウエダがフェイエノールトのファーストストライカーを務められるかどうか確信できない」とし、「ヒメネスがファーストストライカーだったことも、ウエダのプレー時間が少ないのも理解できる」と厳しい言葉を述べている。
ヒメネスはアーセナルやアトレティコ・マドリーからの関心が噂されており、退団が濃厚。来シーズンは上田の出番増加も期待されているが、日本人ストライカーは周囲を納得させるパフォーマンスを見せられるか。
構成●サッカーダイジェストWeb編集部
2024年05月17日 12:54
米メジャーリーグサッカー(MLS)の選手会(MLSPA)は16日、2024年の年俸データを発表し、インテル・マイアミ(Inter Miami)のリオネル・メッシ(Lionel Messi)がリーグ史上最高額の2045万ドル(約31億9000万円)を稼いでるだけでなく、MLSの計25チームの年俸総額も上回っていることが分かった。
2024年05月17日 12:42
清水エスパルスが5月16日、公式YouTubeチャンネルで「【試合の裏側】アウェイ遠征ロッカールームが出来るまで 0506vs群馬」を公開した。
動画には、6日に行なわれたJ2第14節のザスパ群馬戦(3−0)の試合開始5時間前から、選手たちが使うバッグやユニホームなどを準備するスタッフたちの仕事ぶりが収められている。
【動画】清水が試合の裏側を公開!
この投稿には、以下のような声が上がった。
「スタッフの皆さんいつも手厚いサポートありがとうです!」
「選手を支える方々に感謝します」
「こういうスタッフのためにも、勝ち点3がある。あらためてリスペクトを忘れずに...」
「最後のOne Familyがホントそうだなあって!」
「まさに縁の下の力持ち」
「裏方さんのおかげで試合運営が成り立っている感謝です!」
「選手だけでなく、スタッフの方々も子どもの憧れです」
「トレーナーの密着動画見たいです!」
「いつもありがとうございます」
「来季はJ1やで!」
普段は見られない“裏方”の下支えに、ファン・サポーターも感謝している。
構成●サッカーダイジェストWeb編集部
2024年05月17日 12:41
デンマーク1部ブレンビーに所属する鈴木唯人が絶好調だ。
ここに来てゴールとアシストが激増。5月15日のノアシェラン戦(1−0)でも鮮やかに決勝点をマークしてみせた。その活躍は名門の目にも留まっており、デンマークメディア『bold』は「トッテナム、アヤックス、シュツットガルトは再びユイト・スズキを観察するためにスカウトを派遣した」と伝えた。
すると、この報道に対し、韓国メディア『Xports News』が敏感に反応。ミッティランにはチョ・ギュソン、トッテナムにはソン・フンミンと自国の代表選手が在籍している点を踏まえ、次のように訴えた。
「一部の国内ファンはチョ・ギュソンとソン・フンミンが同じ釜の飯を食う姿を期待したが、トッテナムが関心を持っているのは日本のユイト・スズキだった。2001年生まれの彼は、今季の全公式戦で11ゴール・9アシストを記録。リーグ最高のセカンドストライカーに成長した。ウイング、攻撃的MFとしてもプレーでき、決定力も申し分ないようだ」
【動画】ゴール前に飛び込んで決勝弾!鈴木唯人の今季11点目
同メディアはまた、「スズキは韓国サッカー界でも知られている人物だ」と説明。過去に受けた衝撃を振り返った。
「スズキは2年前、ウズベキスタンで開かれたU-23アジアカップの準々決勝で2発を叩き込み、日本の韓国戦3−0完勝の立役者となった。特に、日本は2024年のパリ五輪を目ざし、独自にU-21でチームを構成しており、その多くが1、2歳上の相手と対戦したため、韓国サッカーに警鐘を鳴らした試合としても評価された」
多方面から熱視線を浴びる22歳のステップアップはあるのか。『Xports News』は「トッテナムは今夏、プレシーズンツアーで日本を訪問する予定だ。ソン・フンミンがキャプテンを務めるトッテナムにスズキが加わり、韓日デュオが誕生するのか注目が集まる」と締め括った。
構成●サッカーダイジェストWeb編集部
2024年05月17日 12:30
14日、トッテナムはマンチェスター・シティをホームに迎え対戦し、0-2で敗れた。この結果、シティは19日(現地時間)に行われるウェストハム戦に勝利すればプレミアリーグのタイトルを獲得できることになった。一方のトッテナムは、この敗戦により、来季のチャンピオンズリーグの出場権を逃した。
そんななか、トッテナムのキャプテンFWソン・フンミンは取材に応じ、この試合85分に訪れた決定的なチャンスについて言及した。英『The Standard』が伝えている。
「私も人間だ。キーパーは本当に良い決断をして、彼自身を本当に大きくした。チームは懸命に努力し、良い結果を得ようとしていたのに、あのビッグチャンスを決められなかった責任を感じている」
ソンは、得点を決められなかった責任を感じながら、スーパーセーブをしたシティGKシュテファン・オルテガを賞賛した。
試合は0-2で敗れたが、あのシーンで得点していれば、試合展開は異なるものになっていた可能性もある。
また、語るのは時期尚早としながらも、ソンは来季についても下記のように話した。
「言うのは時期尚早であることはわかっているが、来季に向けてもっと良くしなければならない。なぜなら、ポステゴグルー監督がクラブに大きな成功をもたらすことができると私は信じているからだ」
今季、トッテナムに残された試合はシェフィールド・Uとのリーグ戦のみだ。この試合に負けなければプレミアリーグ5位で終わり、来季のヨーロッパリーグ出場権を獲得できる。最終節に勝利してトッテナムは来季に向けて弾みをつけられるか。
2024年05月17日 12:17
オランダサッカー協会(KNVB)は16日、EURO2024に臨むオランダ代表の予備メンバー30名を発表した。
2024年05月17日 12:10
昨季プロ8年目でキャリアハイの10ゴールを挙げたサガン鳥栖のMF長沼洋一。
2022年7月に加入した鳥栖ではデビュー戦から先発に抜擢され、いきなりJ1初ゴールを挙げる幸先の良いスタートを切って以降、定位置を確保。昨季のブレイクに至ったが、鳥栖へ加入する以前はJ1で十分な出場機会を得られず、ゴールやアシストを1つも記録することができなかった。
3年半に渡る“レンタル生活”も経験した27歳の万能アタッカーに話を訊いた。(取材・文/新垣 博之、取材日:2024年4月21日) サガン鳥栖での活躍を支える恩師の存在
――昨季はクラブにとって7年ぶりとなる二桁ゴールを奪いました。オフには他クラブから獲得のオファーもあったと思いますが、鳥栖に残留した理由は?
「鳥栖に、そして、監督である(川井)健太さんに良い形でオファーをもらって、2022年の夏に来させてもらって以降、ずっと試合に出し続けてもらっています。
個人的には良い結果も出せているので、鳥栖には本当に感謝しているんです。これでこのタイミングで鳥栖を離れるのは絶対に違うと思いましたし、今年もそんな鳥栖のチカラになりたい!鳥栖のためにプレーしたいと考えて残留しました」
※昨季第33節の柏レイソル戦でシーズン10点目を挙げた長沼洋一(写真提供:サガン鳥栖)
昨季は主に[4-2-3-1]の右ウイングを担った長沼は意外にもヘディングで4得点。これはリーグで4番目に多い数字でFW以外の選手では最多を記録。
1トップに本職ではない小野裕二(アルビレックス新潟)が定着し、ゲームメイクも担う“偽9番”の彼が中盤に引き、空いたゴール前のスペースに長沼が飛び込む場面も多かった。
「僕のプレーで言うと、2022年はサイドに張ってプレーすることが多かったと思いますけど、去年は中央に入って得点に絡んでいくシーンが多く、それがゴールを量産できた要因の1つかもしれません。去年はサイドに張る場面は少なかったと思いますが、今年は2022年に近いかもしれませんね。」
――長沼選手は“本物の両利き”ですか?右利きながら右サイドでボールを受けると相手DFから遠い左足でキープしたり、ドリブルやパスにも左足を使いますよね?シュートだけ左足を使う右利きの選手は多いですが、両足を的確に使っている印象があります。
「確かに両足だけでなく、右サイドも左サイドもどちらのサイドでも得意・不得意になるプレーもないですし、そこそこ両足で蹴れるほうだとは自覚しています。
ヘディングのゴールが多いのは偶然です。僕がヘディングで取って来たことなんてありませんし、イメージないと思うんですけどね。それにもっと足で決めたいぐらいです(笑)」
長沼はこれまでJリーグ通算169試合(今季J1第14節終了現在)に出場して来たが、その約77%を占める131試合で彼を起用してきたのが、現在の鳥栖を率いる川井健太監督だ。
筆者は2017年に女子サッカーから取材活動をスタートしたが、当時なでしこリーグ2部の愛媛FCレディースを率いていたのが、川井監督だった。
攻撃時と守備時でフォーメーションを変える可変システムを完成度高く運用していた愛媛Lは、国内2部のクラブながらFW上野真実(サンフレッチェ広島レジーナ)とFW大矢歩(バニーズ群馬FCホワイトスター)の2人がなでしこジャパンに招集されるなど、チームを率いる川井監督は戦術家の一面と共に選手育成の面でも確かな手腕を発揮していた。
「愛媛の時から信頼して使い続けていただいているので感謝していますし、『2点取られても3点取れ』と考える攻撃的なサッカーを志向する健太さんが指揮するチームでプレーしたいと考えていました。
そうは言っても、愛媛の時から個人的に話をすることはあまりないんですけどね。僕は去年の今頃、2度も退場処分になったんですが、その時も特にお咎めはありませんでした。微妙な判定だったので仕方なかったんですけどね。
ここ最近はロッカールームで熱いゲキが飛んでいるのがクラブ公式YouTubeを通して伝わっていますが、珍しいことだと思います」
「プロサッカー選手になるために」広島へ“越境”
山梨県甲府市出身の長沼は8歳からサッカーを始め、当時はバルセロナで一世を風靡したブラジル代表のファンタジスタ=ロナウジーニョに憧れた。
中学時代は地元・甲府市の強豪Uスポーツクラブで活躍。高校からは広島へ単身で“越境”。Jユース最強を誇る名門サンフレッチェ広島ユースに加入した。
「多くのクラブからユース選手としてのオファーをいただき、最終的には2クラブに絞ったうえで練習参加もしました。
練習参加自体は1週間ほどでしたが、広島のスタイルや先輩方とプレーした時のサッカー的な感触がとても良く、プロサッカー選手になるための環境面もすごく良かったので広島に決めました。
実家から離れることは特に意識せずに決めましたね。親にも相談はしていましたが、僕の意見を尊重してくれました」
――ただ、長沼選手が加入するタイミングで広島ユースの礎を作ってきた森山佳郎監督(現ベガルタ仙台監督)が退任されました。
「ゴリさん(森山監督)が広島ユースに根付かせた『気持ちには引力がある』という合言葉が有名であるように、育成年代のスペシャリストであるゴリさんの存在は僕が山梨でプレーしていたクラブの指導者の方々からも、とても良い評判を聞いていました。
広島の練習に参加した時はゴリさんが監督だったのに、加入を決めたあとに退任されることを聞いたので、その時はさすがに『えっ?』って、なりました。でも、広島には『プロサッカー選手になるために』という強い覚悟をもって行くことを決めていたので、大きな影響はありませんでした」
――当時の広島ユースには2つ上の先輩にMF川辺駿選手(スタンダール/ベルギー)、1つ上にはDF荒木隼人選手、同期にはFW加藤陸次樹選手、2つ下の後輩にはGK大迫敬介選手やMF川村拓夢選手、満田誠選手など、現在の日本代表に招集される選手もいました。
名前を挙げた選手だけでもプロの世界でのキャリア形成には様々な形がありますね。
「僕もそうですけど、選手それぞれに分岐点がありますからね。広島の育成が凄いのは、プロの世界で活躍する選手が同世代だけでもこんなにも多くいることです。ユースからトップチームへ昇格できなくても、ここ数年は大学経由(荒木・加藤・満田)で戻ってくる選手も多くなっていますし、他のクラブ(川辺・川村・加藤)に行って活躍する選手もいます。
今こうして振り返ってみても、選手個々の質も高かったと思います」
――広島ユースは所謂「ミシャ式」(※)と呼ばれる可変システムを採用していました。攻撃時は[4-3-3]、守備時は[5-4-1]へと変化するため、シャドーなら攻撃時にトップ下やインサイドハーフ、守備時はサイドハーフなど、少なくとも2つ以上のポジションを役割として求められます。
※「ミシャ式」:ミハイロ・ペトロヴィッチ監督(コンサドーレ札幌監督)が広島を率いていた2008年頃に完成し始めた戦術。監督の愛称から名付けられた。
「ユースの時はFWやボランチでもプレーしていましたが、主にシャドーでのプレーが多かったですね。
ユースもトップチームが採用しているシステムでプレーしていましたし、トップと同じトレーニングをしたり、トップに呼ばれてトレーニングもしていましたから、そこで鍛えられたなと思います。それがいろんなポジションでプレーできている現在にも繋がっているように思います」
――ところで、3年生の時には2つ下のGK大迫選手とMF川村選手がすでに1年生で主力としてプレーしていました。体格的にも大柄な彼らは先輩の言うことをちゃんと聞いてくれたんですか?(笑)
「当時の僕は副キャプテンとしてゲームキャプテンもしていましたが、高校1年生から見た3年生って怖い存在というか。彼らは素直に聞いてくれていましたけど、怖かったんじゃないですか?でも、僕よりムツ(加藤選手)のほうが雰囲気的に絶対に怖かったはずですよ(笑)」
2016年からトップチームに昇格した長沼だったが、当時の広島は現日本代表の指揮官・森保一監督が率いて4年で3度のJ1制覇を果たした黄金期の真っ只中。
特にシャドーのポジションではユースの大先輩である森崎浩司(現広島アンバサダー)や野津田岳人、優勝の立役者である柴崎晃誠(現広島育成部コーチ)のようなMFだけでなく、2016年のJ1得点王に輝くピーター・ウタカ(現ヴァンフォーレ甲府)や現日本代表の浅野拓磨(現ボーフム/ドイツ)のようなFWも競争相手となる。
「広島にはプロになるために行きましたし、1年の頃からトップの練習やキャンプにも参加できていたので、順調に行けば昇格できると考えていました。だからこそ、自分の場合は大学進学も全く考えていませんでしたし、プロだけを見ていました。
もちろん、その頃のトップチームがJ1で優勝する姿も間近で見ていました。実際にトップ昇格が決まった時も『やってやるぞ』と覚悟も決まっていましたね」
――ただ、トップ昇格後の1年半は一度もリーグ戦での出番がありませんでした。気になったのは長沼選手が練習でもウイングバック(WB)に固定されていたことでした。自ら志願したのですか?
「自分では一度も言ったことはありません。正直、やりたくなかったですよ。特に1年目は練習から、『やりたくないのに、なんでこのポジションなの?』と思ってやっていました。
だからこそ、ポジションの件も込みで2年目の夏にレンタル移籍を志願しました。若かったですね(笑)」「WBが嫌だった」から始まった武者修行、ピッチ内外で得た経験
※長沼洋一選手の年度別リーグ戦出場記録(筆者作成)
出場機会を掴めないだけでなく、日々の練習から自分の納得できるポジションでアピールもできない現実に直面した長沼は2017年8月、J2のモンテディオ山形へ育成型期限付き移籍を決断。
翌年にも、確固たる自身の哲学をもつ大木武監督(ロアッソ熊本監督)が率いる当時J2のFC岐阜へレンタル移籍。決して多くの出場機会は得られなかったが、掴んだものは大きかったようだ。
「プロ2年目の夏に、『本来の自分が得意である前線のポジションで勝負したい』と代理人を通して希望を出し、山形へ半年間行くことになりました。
その山形では3試合に途中出場しただけだったんですけど、練習から凄く充実した日々を過ごすことができました。練習試合も含めてFWやトップ下、ウイングでプレーするなかで、『全然やれる!』と手応えを掴めた時間だったんです。
それから、その年の終わりに東京五輪世代の代表チーム(U-21,22日本代表)が立ち上がり、僕もその最初のメンバーに招集されました。ポイチさん(森保監督)が東京五輪代表チームの監督に就任することも決まっていたので、『WBなら東京五輪に出られる可能性もあるな』と考え直しました。
次の年に岐阜へ行った時には自分で大木さん(大木監督)に『サイドバック(SB)でプレーさせてください』と言いましたし、覚悟を決めました。
実は山梨では大木さんの息子さんと同じクラブでプレーしていたこともあり、大木さんは僕が中学時代にFWやトップ下でプレーしていた頃のプレースタイルを知っていました。これはあとで知ったことなのですが、どうやら大木さんは僕を前のポジションで考えていたようなんです」
2019年からの2年間はJ2の愛媛FCへレンタル移籍。現在の鳥栖を率いる川井監督の下では広島ユース出身の後輩MF川村も同じく武者修行先として共にプレーした。また、鳥栖で同僚となるDF山崎浩介やGK岡本昌弘、MF森谷賢太郎との出会いもあった。
「愛媛にはDF森脇良太さん(愛媛)やMF高萩洋次郎さん(アルビレックス新潟シンガポール)を始め、広島ユース出身の選手が活躍し、広島に戻ってからも活躍するケースが多く、他クラブからでもFW斎藤学選手(アスルクラロ沼津)を筆頭に愛媛でブレイクして大きく羽搏いていく選手が多いイメージがありました。
そして、当時の愛媛では世代別の日本代表で一緒だった同学年のMF神谷優太(江原FC/韓国)が前年から10番を着て活躍していて、東京五輪出場も狙う彼と共にプレーしたいと考えて加入しました。
ただ、レンタル移籍も3回目。危機感も通り越して、実質はラストチャンスだと思って愛媛に向かいました」「今後の目標は日本代表」
愛媛での2年間でリーグ72試合に出場して2ゴール8アシストを記録した長沼は2021年、3年半に渡った武者修行から古巣・広島に復帰。しかし、当時の広島は監督交代が短期間で2度起きる過渡期。J1経験のない長沼には十分なチャンスが与えられなかった。
2021年6月には当時の広島の本拠地・エディオンスタジアム広島で開催された天皇杯2回戦で関西リーグ1部・おこしやす京都AC(※現在は関西2部)相手に先発出場するも慣れない3バックの左DFを担当して1-5の大敗を喫するなど、少ないチャンスも生かせなかった。
「日本が2022年のカタールW杯でドイツやスペインを下したように、天皇杯でもジャイアントキリングは何度も起きています。あの試合は負け方も良くなかったので、そのあとも悔しかったですけど、そこまで引き摺りはしなかったです」
――ただその後、鳥栖へ移籍するまでの約1年間は出場機会が少ない時間が続きました。
「確かにメンバー外になることも多かったんですが、『出ればやれる』とは思っていましたし、『今はそういう時期だ』と捉えて、試合に出られない時期だからこそ、やれることをやろうと考えて準備をしていました。
そう思えるのも、世代別の代表や移籍を経験したことで、いろんな選手を見て来たことにもあります。やっぱり、日本代表へ入るような選手やプロの世界で長くプレーする選手はメンタルの部分が優れていて、ピッチを離れても意識が高く、いかに準備することが大切なのかを見てきました。
メンタル面や身体のケア、肉体改造にまつわる様々なトレーニングを取り入れたり、自分のプレーや相手チームの分析なども準備のひとつだと思いますね。
そういう時間があったからこその現在でもあると思っているので、腐ったり、心が折れるようなことは全くありませんでした。だからこそ、2022年の夏に完全移籍で鳥栖へやってきた時にも、すぐに試合に出て結果を残すことができたと考えています」
――それでは最後に今年の目標を教えてください。
「チームとしてはもっともっと良いサッカーができるように、自分自身もチームの勝利に貢献できるように、と考えることで今は頭がいっぱいですね。今はまず、鳥栖のためになることを精一杯やっていきたいと考えています。
個人としては去年10点取れたので、今年も二桁は取りたいと考えています。結果を出し続けることで日本代表に入るチャンスもまだあると考えています。
鳥栖からは2022年にFW岩崎悠人くん(現・アビスパ福岡)も招集されました。国内組限定の編成時でも良いので、まずは日本代表に入ることを目指してやっていきたいと思います」サガン鳥栖は「ここから這い上がれる」
※サガン鳥栖公式YouTubeより(動画3分5秒から)
今季から背番号を24から88に変更した理由を、「元々8番が好きだったんですが、サポーターからの人気が高い本田風智選手(今季から10番)が着けたすぐあとに着けたくなかったので、8を並べて88にしました」と答えるなど、明るいキャラクターをもつ長沼。
筆者が昨季挙げた10ゴールのうち先制点が8つあったことを伝え、「契約更新の際に金額を上げる材料に使ってください。100万円くらいは上がるかも」と冗談を飛ばすと、広報スタッフを見ながら、「もっと行くでしょう!先制点は大事ですからね!もっともっと〜!!(広報さん:苦笑い)」と返して来るようなコミュニケーション力に長けた人間性も魅力だ。
今季の鳥栖は開幕から低迷してきたが、ここへ来て川井監督体制初の連勝。毎年のようにチーム人件費がJ1最少クラスのチームには長沼のようにJ2でも出番に恵まれなかったり、J3経験しかないような挫折を経て這い上がって来た選手が多い。
5月15日、Jリーグは31歳の誕生日を迎えた。32年目のシーズンを迎えた今季、鹿島アントラーズと横浜F・マリノスが未だに1度も降格を経験していないことは有名だが、「オリジナル10」以外の後発のクラブでJ1に昇格して以降、1度も降格を経験していないクラブが1つだけある。2012年からJ1を舞台にして戦うサガン鳥栖だ。
やりくり上手でW杯出場選手も!サガン鳥栖、「歴史上最強の日本人選手」5名
サガン鳥栖はここから這い上がる!
サポーターの夢を乗せて、明るく元気な長沼がどこまでも走り続ける!
【プロフィール】
長沼 洋一(ながぬま よういち)
1997年4月14日生まれ(27歳)
178cm/70kg
山梨県甲府市出身
ポジション:GK以外全てを経験
高校から名門サンフレッチェ広島ユースに“越境”。2016年にトップ昇格したものの、4年で3度のJ1制覇を果たした黄金期の広島では出場機会を掴めず。2017年8月からはモンテディオ山形(J2)、2018年にはFC岐阜(J2)、2019年からの2年間は愛媛FC(J2)へと期限付き移籍。約3年半に渡る武者修行を経た2021年に広島へ復帰するも出番は少なく、2022年7月にサガン鳥栖(J1)へ完全移籍した。2023年には10ゴールを挙げてブレイク。今季もウイングやSBを両サイド遜色なくこなし、公式戦全試合に出場中。両足から繰り出すミドルシュートや意外性のあるヘディング、抜群のスピードで攻守におけるデュエルでの強さも武器とし、ポジションもプレースタイルもオールラウンドな魅力が際立っている。
2024年05月17日 12:00
2023シーズン、関東学院大学サッカー部は創部以来初となる関東大学サッカーリーグ1部への昇格を決めた。2部リーグで12勝3分7敗(勝ち点39)の成績を収め、準優勝。55得点(33失点)はリーグ最多得点チームだった。そして、今春の卒業生からは5人のJリーガーを輩出(2022年度卒業生からは6人)。大学サッカー界での存在感が年々高まっている。
躍進の要因として、2006年から続く横浜F・マリノスと提携を挙げる大学関係者は多い。指導者派遣を柱とした両者の提携はどのような経緯で開始され、何をもたらしたのか。本記事では両者の目線から考察する。
関東学院大学サッカー部からは狩野満GMと奈良安剛監督(横浜F・マリノスからの派遣)、横浜F・マリノスからは本提携の主幹部署であるスポーツ事業本部スポーツ事業部の黒川祐部長に登場いただき、提携の意義、大学生年代の育成について話を聞いた。
インタビュー・文 玉利剛一(フットボリスタ編集部)
コーチが授業参観!?成績表を提出!?横浜F・マリノスの指導方針
――昨シーズンの話になりますが、あらためて関東大学サッカーリーグ1部昇格おめでとうございます。2023年度の卒業生からはJリーガーを5人輩出するなど、近年の関東学院大学サッカー部の躍進について所感を聞かせてください。
狩野GM「1部昇格に関しては、普段お世話になっている方が喜んでくれたのが嬉しかったですね。関東学院大学の教職員の方々をはじめ、試合を観に来てくれる地域の飲食店の方々、そして歴代のOBOGたち。特にOBOGたちは現役の部員であるかのように皆が純粋に喜んでくれました。長年継続して取り組んできたことが昨シーズン実を結んだと思っているので『ちゃんと繋げたよ』と報告できました」
奈良監督「私も同じ想いを持っていて、前任の石村(大)監督が長年指導されていたベースがあってこその1部昇格だと思っています。私が就任したタイミングでは選手たちが本気でプロを目指すことを公言していて、1部昇格を現実的な目標として見据えている状態でした。近年は卒業生からJリーガーの輩出は普通のことになっていましたし、良い連鎖を生んでいたというか、プロを目指すこと、1部昇格を目指すことが身近なものとして(選手たちが)認識していたのは大きかったですね」
――お名前が挙がった石村前監督(現 横浜F・マリノスジュニアユース追浜コーチ)も、奈良現監督も横浜F・マリノスからの派遣です。2006年から開始された指導者派遣を柱とした提携関係のキッカケは何だったのですか?
黒川部長「(提携が開始された)2006年はクラブの変革期でした。翌年にみなとみらい(マリノスタウン)にクラブハウス等々の活動拠点を移すことを控える中で、よりクラブの事業を大きくするアプローチの1つとして指導者育成をテーマとした(関東学院大学との)提携のアイデアが出たと聞いていますし、私も当時は違う部署に所属する社員として、そのように見ていました」
――つまり、横浜F・マリノスのメリットとしては、指導者に大学生を指導する場・経験を提供できるということですね。
黒川部長「そうですね。例えば、奈良監督は育成年代の指導経験は積まれている中で、もう一皮むけてもらうために、大学での指導環境を提供できるのはクラブの人材育成の面で大きなこと。あと、プライオリティを付けるのは難しいですが、ユースを卒業した選手たちの進路先として大学と太いパイプを持てるのも魅力です」
――逆に関東学院大学は横浜F・マリノスからの指導者派遣をどのように評価されていますか?
狩野GM「結論から先に言うと、限られた予算で学生や部の成長を最大限促せる持続可能な提携であるということが大きいです。うちは他の関東大学サッカーリーグに所属する大学と比較すると、大金を投資した施設がある訳ではないですし、専用グラウンドもない。寮もないし、特待生制度を使った選手獲得も行っていないし、部費も安い。F・マリノスさんとの提携も大きなお金が動くビジネスとしてではなく、お互いにメリットがあり、足りない部分を補い合える形で成り立っているので、関係性が強いのは特徴だと思います」
――大学とプロサッカークラブ。同じサッカーを扱うとはいえ、指導方針など考え方が違う部分もあるかと思います。
狩野GM「おっしゃる通り、教育機関におけるサッカーの指導はプレー面だけに留まりません。ただ、F・マリノスさんにはその意義を強く理解していただいています。そのことが長く提携を継続できている理由でもあります。例えば、F・マリノスユースでは選手に学校の成績表を提出させるなど、ピッチ外の活動も重視しつづけきた伝統があるので、奈良監督をはじめ、歴代の監督たちが学業や就職活動など、多角的に学生を指導することに対する順応が早かったです」
奈良監督「大学生を指導するにあたって意識を変えたというより、F・マリノスのアカデミーで指導している時も学校の先生と選手の指導について意見交換していましたし、授業参観に行くこともありました(笑)。サッカー選手としての成長は学校、家庭の環境とリンクしているのは経験的にも理解しているので、選手を人として成長することをサポートするのは当たり前であり、僕たちの仕事の楽しみでもあります」
――そうした指導方針は、奈良監督が中学生時代に所属した横浜マリノスジュニアユース追浜時代から続くものですか?
奈良監督「そうですね。僕がジュニアユースでプレーしていた頃からサッカーだけではなく、生活面に対しても指導があったので、(オフザピッチを含めた指導は)当たり前という感覚です。ただ、『右向け右』という指導ではなく、選手と目線を合わせて一緒に課題に向き合ってくれた記憶もあります」
――さきほど狩野GMから伺った特待生制度がないという話にも繋がると思いますが、所属する大半の選手が大学卒業後はプロサッカー選手ではない社会人キャリアをスタートする意味でも重要な指導方針ですね。
奈良監督「僕が監督に就任して以降、選手のリクルーティングにおいてハッキリと相手に伝えているのは、サッカー選手として成長する強い意欲を持っていることは当然として、『関東学院大学の環境をフル活用して欲しい』ということ。つまり、サッカーも学業も全力で取り組むこと。だから、サッカー部に所属している学生は自身が興味をもった学部に所属していますし、今後も学費を免除して選手を獲得するようなことはないと思います」
2022年より関東学院大学サッカー部の監督を務める奈良安剛氏
「あれ?また勘違いしていない?」
――現在、関東学院大学サッカー部には4名の横浜F・マリノスユース出身の選手たちが所属しています。さきほど黒川部長が言及されていた『ユースを卒業した選手たちの進路先』としての役割についての考え方についても聞かせてください。
奈良監督「前提として『F・マリノスに加入した際にスムーズにプレーできるように』といった意識で選手を指導することはありません。システムも選手の個性で変更しますし、指導する上での優先順位は『選手が少しでも長くキャリアを続けられるために』ということが高いです。ただ、選手がF・マリノスのトレーニングに参加させてもらう機会もありますし、身近なクラブであることは間違いないので、練習でF・マリノスのエッセンスを入れるようなアプローチを行うことはあります」
――実際、卒業後にプロサッカー選手になる選手も横浜F・マリノス以外のクラブでキャリアをスタートする選手の方が多いですしね。
奈良監督「サッカー選手としてのキャリアを続ける上で、どのような監督、どのようなスタイルでも反応できる選手であって欲しい。だから『関東学院大学ではこうだったとか絶対卒業後には言うなよ』と伝えています」
――関東学院大学サッカー部にはJクラブのユースをはじめ、高校時代に強豪チームに所属していたエリートと呼んでいい選手たちが多く所属しています。良くも悪くも確立されたサッカー観や高いプライドを持つ選手もいると思いますが、そうした選手たちへのアプローチで意識していることはありますか?
奈良監督「入部直後のミーティングで『君たちは18歳でプロになれなかった選手だよ』とハッキリと伝えます。『日本サッカー界も、元所属チームも、君たちがプロサッカー選手になれなかったことで、困ることはない』と。18歳までに積み重ねてきた実績も、指導も否定しませんし、魅力があるからこそ入部してもらった上で『さらに上を目指す上で足りないものは何?』と問いかけます。……いや、入部直後のミーティングと言いましたけど、これは気になる態度やプレーを見た時には定期的に言うかもしれませんね。『あれ?また勘違いしてない?』って(笑)」
――関東学院大学サッカー部がスローガンの一つ として掲げる「雑草魂」の精神ですね。
奈良監督「出身チームを考えると決して雑草とは言えない選手も多いのですが、昨年まで(関東大学サッカーリーグ)2部で戦う関東学院大学の立場を考えると、自分たちが置かれている現状を自覚した上で表現する必要性はあるよねとそれまでずっと使用してきた 『雑草魂』というスローガンを引き続き使うようになりました。『Jクラブのスカウトは1部の試合を観に行くし、2部の選手を獲得したいと思わせるためには相当な覚悟が必要だよ』と話しています」
――そうした意識改革は簡単ではありません。
奈良監督「意識の部分はF・マリノスで指導していた時も強調していたことなんです。『F・マリノスのアカデミー出身であることは、社会に出たら何の価値もない』、『結局は自分という人間が何を表現出来るか』という指導は大学生相手でも変わりません。むしろ、関東学院大学ではピュアに指導者の教えを吸収したいと考える選手が多く、逆に僕が助けられているところもあります」
練習中、選手たちに話しかける奈良安剛監督。「雑草魂」をスローガンの一つに選手には強い覚悟を求めている
――確かに大卒Jリーガーに取材をすると、意識の部分で「自分に矢印を向ける重要性」は大学時代に得たものとして頻繁に出てくるフレーズです。その上で、プロからオファーを受けられる選手の特徴について何か共通点はあるものでしょうか?
奈良監督「サッカーはチームメイトがいて、対戦相手がいるスポーツであることを理解した上で自分を表現できることですね。自分が得意なプレーばっかりやってもチームは勝てない。例えば、ある攻撃的な選手は上手くいかない時に味方に要求ばかりしていたのですが、自分の特徴を出すために守備のプレーを整理する必要性に気が付いてから結果を出せるようになったこともありました」
――Jクラブのユース以上に、大学は選手たちが広い視野でサッカーを向き合える環境があるということですよね。
奈良監督「そうですね。僕自身は18歳でプロになったので大学を経験していないのですが、関東学院大学で指導する中で、大学という環境は様々な視点を得る要素が詰まっていて、それはサッカー選手としても必要なものだなと感じます。だから、大学では所属する学部はもちろん、他の学部の単位も取ることを選手たちには推奨しています。(大学は)日本サッカー界独特の環境だと思いますが、得るものは大きいと思いますね」
――その話に関連するところでは、関東学院大学は横浜F・マリノスの他に、東京都の社会人チームであるHBO品川とも提携されています。この狙いを教えていただけますか?
狩野GM「HBO品川さんは海外でサッカーを続けたい選手をサポートすることを活動コンセプトに掲げるクラブで、海外サッカー事情に関する講演会や個別相談会をうちの学生向けに開催してもらっています。また、この提携はHBOさんとだけではなく、関東学院大学国際文化学部も含めた3者での提携です。国際文化学部の協力も日頃より得ています。キッカケはJクラブからオファーがなかった卒業生が海外でプロになる道を探るケースが増えたことです。そういう可能性もあるならば1年生の頃から語学や海外の文化や海外のサッカー事情を勉強する機会を提供しようと。もちろん、Jリーグ経由で欧州クラブに挑戦する選手も今後出てくると思いますし、そうした時に大学の4年間で事前に準備できるのはアドバンテージになるはずです。大学の4年間がサッカー選手としてのキャリアにおいてロスになってはいけないので」
――大学は様々なバックボーンを持った学生が集まる環境で、仲間から受ける刺激も大きいと思います。
奈良監督「サッカー的なところで言うと、例えば、矢板中央高校出身の選手はヘディングが強いとか、F・マリノス出身の選手は“止める蹴る”が上手いとか、指導していても選手たちの引き出しに何が入っているのか探るのは楽しいですよ。そうした選手たちの個性をふまえて、選手たち自身がお互いに相手の足りないところを指摘できるのは関東学院大学の文化というか、特徴ですね」
――高卒でプロになれなかった選手が大学でブレイクスルーする要素として、他にも重要だと感じることはありますか?
奈良監督「フィジカル面は18歳で完成するのは難しい。僕の経験的には21歳である程度(フィジカル面を)プロでも勝負できる状態まで鍛えられると考えています。だから、大学も4年間はいらないかなと思っていて、3年生の終わりでプロの世界にいける選手は挑戦して欲しい。欧州でもポストユースの育成において、U−21のチームが多いのはそういうことなのかなと」
関東学院大学在籍時に特別指定選手を経験し、2023年から横浜F・マリノスでプレーする村上悠緋選手
横浜F・マリノスに対するエンゲージメントが高い理由
――関東学院大学が今シーズン、関東大学サッカーリーグ1部で初の勝ち点を得た東洋大学戦(1-1)で得点を決めたのは横浜F・マリノスユース出身の2年生・佐藤未来也選手でした。クラブとしてアカデミー卒業生の活躍は嬉しいものですか?
黒川部長「もちろんです。試合毎に狩野さんにユース出身選手について『パフォーマンスどうでした?』と聞いちゃいます(笑)」
――先日、榊原彗悟選手に取材させていただいた際に話されていたのですが、ユース卒業後もクラブは選手の状況を継続的にチェックしているんですね。
黒川部長「トップチームへの昇格は、実力があっても同じポジションに強力な外国籍選手がいるとか、その時のチーム事情によって見送られることもあるようです。だから、全員という訳にはいきませんが、昇格の可能性があった選手はクラブとして追いかけていますね」
――黒川さんの立場から横浜F・マリノスと関東学院大学の提携に関して今後の活動のイメージは何か持たれていますか?
黒川部長「一言で言うと『多角さの創出』ということになると思います。現在の提携はF・マリノスからの指導者派遣を軸としていますが、逆に関東学院大学サッカー部出身の方がF・マリノスのスクールコーチになる未来があってもいい。現在、事務職として関東学院大学サッカー部出身の方がクラブで働いてくれていますが、様々な形で交流が進むのが理想だと思います」
狩野GM「お互いの知見を活かしていくような関係性になればいいですよね。例えば、F・マリノスさんが開拓したい新規事業の分野で関東学院大学の研究者が派遣されるとか。リソースを共有することで地域が活性化していけば素晴らしいと思います」
――横浜F・マリノスの社員さんが関東学院大学の授業で講師を務める機会もあると聞きました。
狩野GM「はい。年に数回講師派遣をしていただいています。だからビジネスの領域においても、1万人以上いる関東学院大学の学生に一人でも多く日産スタジアムでサッカー観戦をしてもらうようなプロモーション面における協力は今後、検討していきたいと考えています。Jリーグは観客の高齢化が課題となっている中で、大学として出来ることはあるはずなので」
――奈良監督は本提携に関して、今後のビジョンについて何かお持ちでしょうか?
奈良監督「まずは今年1部リーグに残留して、選手たちに高いレベルの環境を提供し続けることを目指します。僕は毎日選手たちの夢を見るんです。それがなくなったら僕は指導者として終わり。自分のキャリア、チームの成績も大切ですが、選手たちが良いキャリアを歩むために何ができるのかを考え続けるということだけですね」
「選手たちには大学という環境を上手く活用してもらいたい」と奈良監督は話す
――最後に一つお聞きしたいのは、狩野GMと奈良監督にとって横浜F・マリノスはどんな存在ですか?
狩野GM「難しい質問ですね(笑)。一言で表すのは無理ですけど……『感謝する対象』という言葉でしかまとめられない。私にとって一番大切なチームは関東学院大学サッカー部です。そのサッカー部にF・マリノスさんの色んな方にサポートしてもらって『うちの大学は日本一のクラブと提携しています』とユース年代の方にに説明できることが嬉しい。だから、一番大切なチームはうちの大学ですけど、F・マリノスは2番目というか、1.5番目や1.2番目くらいに大切な存在というか、そういう関係だと思っています」
「ACLを優勝していただいて、アジアNo.1のクラブと提携していますと言いたい」と狩野GM
奈良監督「僕にとってF・マリノスは物事を考えるベースになっている存在です。当たり前のものとして自分の中にありつつ、どこで生活する上でもF・マリノスで学んだことは通用すると感じていて。憧れであり、一番身近なものである……そんな感じですね」
――横浜F・マリノスのステークホルダーはパートナー・スポンサーも、ファン・サポーターも、指導者も……皆がクラブに対するエンゲージメントが高い印象があります。その要因は何なのでしょうか?
奈良監督「クラブの関係者が情熱をもって、真摯にクラブに関わる仕事に向かっているとは感じます。変な駆け引きなく、多くの人がクラブのために繋がっている。その姿を見た人がクラブに憧れて、ハードワークをして……その積み重ねなのかもしれません。だから、F・マリノスで学ぶこと、働くことは間違っていないと思わせてくれるし、僕も帰属意識が生まれているのだと思います」
狩野満GM(写真左)、奈良安剛監督(写真中央)、黒川祐部長
Photos:(C)関東学院大学サッカー部 , Getty Images
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2024年05月17日 12:00
日本サッカー協会(JFA)の宮本恒靖会長が、国際サッカー連盟(FIFA)のインタビューに対応。日本サッカーの強化に向けて熱い想いを明かした。
現在47歳の元日本代表キャプテンは、古巣ガンバ大阪の監督などを経て、今年の3月24日付でJFAの第15代会長に就任した。なぜ、この選択肢を取ったのか。
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【記事】「彼のような人材が監督として認められれば」JFAの宮本恒靖会長が語る日本代表強化論。現状打破のキーマンは?
JFAは「2050年までにワールドカップを開催して優勝する」という目標を掲げている。宮本会長はその歩みに手応えを示しつつ、明確な課題も口にした。
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バイタリティ溢れるレジェンドは、夢にまで見た世界制覇に導けるか。その手腕に大きな期待が懸かる。
構成●サッカーダイジェストWeb編集部