2024年07月02日 08:00
「全国高校野球選手権・広島大会」(7月6日開幕) 県内公式戦41連勝中の“絶対的王者”広陵に死角はない。今夏はエースの高尾響投手(3年)を中心に、最速146キロ左腕・山口大樹投手(3年)、マウンド度胸満点の堀田昂佑投手(2年)を加えた3本柱で頂点を獲りに行く。 圧倒的な強さに盤石の選手層も整った。酷暑の夏を乗り切るためには今や絶対的な投手1人だけでは難しい。充実の布陣をそろえた中井哲之監督(61)はエース・高尾を「どれだけ休ませられるかがカギになってくる」と夏の戦いを展望した。 今春のセンバツでは高尾が2試合を投げ抜くも、2回戦の青森山田戦で142球完投負けを喫した。高尾自身も「他のピッチャーにも頼れる時は頼らないといけない」と感じた戦い。高みを目指す上で2番手以降の台頭が急務な状況となっていた。 そこでセンバツ後の春季県大会と中国大会では山口と堀田を中心に起用。県大会では高尾の登板を決勝の中継ぎ登板のみにとどめながらも優勝を果たした。 しなやかなフォームからの快速球と切れ味鋭いチェンジアップで結果を残した山口は「今までは響だけだったけど、春に良い経験をして自分が投げて勝つんだという気持ちにもなった」と引き締まった表情。春季県大会の準々決勝、準決勝、決勝で先発した堀田は「高尾さん、山口さんを助けられるような投球をしたい」と意気込んだ。 頼もしい仲間の存在に高尾も「大事なところは自分が投げたい気持ちはあるけど、それまでは助け合いながらやっていきたい」と1人で投げ抜くという気概にも変化があった。目標は同校史上初の「夏・日本一」。悲願に向けて“分業制”でまずは広島の夏を連覇する。 ◇高尾 響(たかお・ひびき)2006年5月22日生まれ、18歳。福岡県出身。投手。右投げ右打ち。172センチ、73キロ。小学1年から軟式の土井ジャガーズで野球を始め、粕屋東中時は硬式の飯塚ボーイズに所属。広陵では1年春からベンチ入り。1年秋の神宮大会では準優勝。2年春のセンバツではベスト4。最速は148キロ。 ◇山口 大樹(やまぐち・だいき)2006年4月6日生まれ、18歳。広島県三次市出身。投手。左投げ左打ち。178センチ、74キロ。十日市小4年時から十日市少年野球クラブで野球を始め、十日市中時は野球部に所属。最速は146キロで持ち球は直球、カーブ、スライダー、チェンジアップ。 ◇堀田 昂佑(ほった・こうすけ)2007年7月11日生まれ、16歳。広島県出身。投手。右投げ右打ち。183センチ、81キロ。尾長小1年時に三篠ベアーズで軟式野球を始め、6年時にはカープジュニアに選出。中広中時は硬式の廿日市ボーイズに所属し、U−15侍ジャパンの一員として第5回WBSC U−15W杯出場。最速143キロ。持ち球は直球、カーブ、スライダー、チェンジアップ。
2024年07月04日 10:33
ガーディアンズのクワンは規定打席に到達…打率.360で首位打者浮上
■Wソックス 8ー2 ガーディアンズ(日本時間4日・クリーブランド)
ヤンキースのアーロン・ジャッジ外野手が、首位打者から陥落した。ガーディアンズのスティーブン・クワン外野手が3日(日本時間4日)の本拠地・ホワイトソックス戦で規定打席に到達。打率.360で一躍首位に躍り出た。
「1番・左翼」で出場したクワンは4打数1安打。規定打席に到達した。26歳のクワンは母方の祖母が山形出身。2023年WBCでは野球日本代表「侍ジャパン」の関係者が接触したが、代表入りの資格を満たせなかったことでも話題となった。
ジャッジは2日(同3日)の試合終了時点で打率.321、32本塁打、83打点。全てリーグ1位の数字で3冠王の期待も高まっているが、打率に関しては強力なライバルが台頭した。
2018年ドラフト5巡目(全体163位)で入団したクワンは、メジャーデビューした2022年に168安打、打率.298をマーク。昨年も158安打を記録した。今季は首位打者獲得なるか、注目される。(Full-Count編集部)
2024年07月04日 10:12
ベッツ「ショウヘイはショウヘイ。全てのことに感心させられる」
左手骨折で負傷者リスト(IL)入りしているドジャースのムーキー・ベッツ内野手は3日(日本時間4日)、本拠地のダイヤモンドバックス戦前に報道陣の取材に応じた。現在のリハビリ状況や1番打者として躍動する大谷翔平投手への思いを語った。
ベッツは6月16日(同17日)の本拠地・ロイヤルズ戦で死球を受けて左手を骨折した。「完治するのを待たないといけない。全治6〜8週間で2週間経ったから、まだ長い道のりだ」。現在はスローイングやランニング、筋力トレーニングをする日々だが、この日は遊撃のポジションで守備練習。ボールを使わないながらも遊撃手の動きを確認する“シャドー守備”を行った。
復帰後は今季不動だった「1番・遊撃」にこだわらない考えだ。大谷が1番打者として躍動し、遊撃では35歳のロハスが攻守で結果を出している。「いいプレーをすることだ。チームが勝てれば気にしない。(ポジション変更でも)今年やってきたことより難しいことはない。問題ないし、チャレンジを受け入れる」。
ロバーツ監督は大谷とフリーマンを切り離す“ジグザグ打線”へのこだわりを語っていた。「(打順も)ショウヘイが打つところに合わせる。打ちたい打順を打ってもいい。彼がやりたいことが決まったら自分がフィットするだけだ。最高のチームになるためなら」と熱く語った。
最後に1番打者として打率.352、8本塁打、18打点と好成績を残す大谷についても言及。「1番を打っていることは関係ないと思う。ショウヘイはショウヘイ。全てのことに感心させられる。でも、感心させられすぎてもう感心しないよ」と笑うしかない様子だった。(小谷真弥 / Masaya Kotani)
2024年07月04日 10:00
3日に放送された『ニッポン放送ショウアップナイター 巨人−中日』で解説を務めた佐々木主浩氏が、巨人のショート事情について言及した。
佐々木氏は「本来なら門脇がレギュラーで出なきゃいけないんですけど、バッティングもそうですが、守備でもミスが目立ってきたのでね。泉口にしたらチャンスなんですよね」とし、「打つ方で結果を出せば、多分レギュラーですよね。2人とも打率が同じような感じなんです」と指摘した。
今季は開幕から2年目の門脇誠がショートのレギュラーとして先発出場してきたが、交流戦前あたりからルーキーの泉口友汰が先発する機会が増えた。ここまで門脇が打率.205、泉口が打率.202となっている。
(ニッポン放送ショウアップナイター)
2024年07月04日 09:00
○ 巨人 6 − 1 中日 ●
<13回戦・前橋>
3日に放送された『ニッポン放送ショウアップナイター 巨人−中日』で解説を務めた佐々木主浩氏が、巨人・吉川尚輝の“進塁打”について言及した。
2024年07月04日 09:00
「広島1−2阪神」(3日、マツダスタジアム)
阪神が連勝で広島とのゲーム差を2に縮めた。広島・九里亜蓮投手、阪神・大竹耕太郎投手とも安定感があるだけに、数少ないチャンスをどう生かすかが勝負を分けると目されたが、予想どおりの僅差。デイリースポーツ評論家・岡義明氏は両チームの得点について「工夫」という共通項を感じ取った。
◇ ◇
まず2カ月以上、本塁打を打てなかった佐藤輝について驚きとともに振り返ったのが、その“構え”だった。
「昨日まで、バットを構えたときに右肩がショート方向に入っていて、少し前かがみのような格好になっていたのに、今日は上体を起こして構えていた。1日で全然違う構えになっていたからね。それが誰かの指示なのか、自分で考えてのことなのかは分からないけど」
そうすることでの効果を説明した。
「まず、ピッチャーに正対できるからしっかり見える。右肩が入って構えて、そこからバックスイングしたらさらに肩が入るから、内角球が非常に見づらくなるでしょう。今日の構えだと、バックスイングしても内角球が見える。視界が広がる構えになったことが、ホームランにつながったのかもしれないね」
もう一人、いい工夫をしたバッターがいると言う。五回に同点三塁打を放った広島・矢野だ。
「それまでと違って、あの打席、バットを長く持っていたよね」と岡氏。
その上で、強烈に引っ張った打球が一塁線を破って三塁打に。
「それまで、フライアウトが多かったでしょう。大竹の緩い球に泳いで、バットの先に当たって、しかもヘッドが返ることで力のないフライになる。矢野はそれを防ぐため、あえてバットを長く持った。これも本人の判断か、誰かのアドバイスか分からないけど、ドンピシャで結果を出したよね」
試合の中で工夫のできる対応力を持った選手が結果を残す。その好例が両チームに存在したゲームとなった。
2024年07月04日 08:54
◆ 大谷翔平がオールスターゲームに先発出場へ
現地時間3日、MLB機構は同16日(日本時間17日)に行われるオールスターゲームのファン投票の最終結果を発表。ロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平選手(29)がナショナル・リーグ指名打者部門で選出された。
今季からドジャースに移籍した大谷はここまで83試合に出場し、打率.320、27本塁打、64打点、16盗塁、OPS1.048をマーク。打率、本塁打、OPSの3部門でナ・リーグトップに立っている。球宴には4年連続4度目の選出を果たしたが、ナ・リーグの一員としての出場は今回が初となる。
2024年07月04日 08:37
「初回から自分の投球で長いイニングを投げて、チームの勝利に貢献できるように頑張ります」。
ロッテの西野勇士が18時からの日本ハム戦に先発する。
前回登板の6月25日の楽天戦では、5回2/3・100球を投げ、4被安打、1奪三振、2与四死球、2失点で5勝目を手にした。同日の楽天戦は4被安打中2被安打が内野安打と、ほとんど捉えられた当たりがなかった。
本人は「入りは良かったかなと思います」としながらも、「全体的な評価としてはあんまり僕の中ではよくなかった。スライダーが良かったというのもあって、それでなんとかなったのかなと思います」と自己分析した。
2回以降、スライダー、カーブが多かったのはスライダーが良かったことも関係していたのだろうかーー。
「そうですね、個人的にはかわしたピッチングというか、自分の理想とするピッチングではない。なんとかそれで作れたかなという感じですね」。
昨季は登板間隔を空けながら先発し、6月が終了した時点で9試合・57回を投げて、6勝2敗、防御率2.84、クオリティスタート(6回以上3自責点以内)は6度だった。今季は6月終了時点で11試合・65回1/3を投げ、5勝5敗、防御率3.58、QSは6度だ。防御率と黒星は昨季よりも悪いが、5回まで持たなかった試合は6月6日の巨人戦のみ。それも、5回に打席が回ってきて代打が送られたものだ。それでも、西野本人は投球のクオリティは昨季の今頃と比べて、「よくはないと思います」と厳しい自己評価。
納得のいくピッチングではないながらも、試合を作りチームを勝利に導いたのはさすがだ。
「ゲーム作りはなんとかやっている感じ。今のパフォーマンスでなんとかできているなという感じで、ゲームを作るというよりは自分が投げたい球が、基本真っ直ぐ中心にあんまり投げられていない。安定感はないかなという感じがしています」。
ここまで5勝を挙げられているのは、培ってきた経験、引き出しがあるからこそなのだろうかーー。
「とにかくこの前はスライダーが良かったので、それを中心に組み立てて、調子が悪くても何か一つ自分が助ける球を持っている。それでなんとかなっているみたいな感じですかね、はい」。
首位・ソフトバンクと12ゲーム差開いている中で、西野にはチームに勝利を呼び込む投球が期待される。「とにかくゲームを作るというところだけはしっかりやっていきたいところ。今の自分の状態もある程度わかっているので、とにかく苦しくてもゲームを作る。良かったら、良かったでそれはいいと思いますし、どんなに苦しくてもゲームを作って行けたらいいなと思います」。今夜もしっかりとゲームを作っていく。
取材・文=岩下雄太
2024年07月04日 08:26
大谷翔平が4年連続で球宴のスタメンに選出
メジャーリーグ機構(MLB)は3日(日本時間4日)、16日(同17日)に行われるオールスターゲームの先発出場野手を決める最終ファン投票の結果を発表した。
2024年07月04日 08:00
「広島1−2阪神」(3日、マツダスタジアム)
打球が左翼席最前列に着弾するのを見届けると、広島・九里亜蓮投手は腰に手をやり首をかしげた。六回に許した勝ち越しの一発。決して甘いボールではなかったが、口を突いたのは反省の言葉だった。
「結局打たれているので。投げきった投げきっていないより、ツーアウトからですし、その辺は反省したいです」
まずは二回1死だ。佐藤輝に内角直球を完璧に捉えられた。右翼席に飛び込む4号ソロで先制点を献上。しかし、その後は走者を出しながらも粘投を見せ、五回まで1失点でまとめた。
同点とした直後、迎えた六回2死だ。佐藤輝と3度目の顔合わせで、カウント2−1からの1球。外角低めにコントロールされたスライダーを逆方向に運ばれた。「味方が追いついてすぐ点を取られてしまっている」と追い上げムードの中で浴びた一発を悔やんだ。
新井監督は2本目のアーチを「フォロー(の風)が吹いていたからね」とかばった。6回2失点、103球の熱投を「しっかりゲームはつくってくれた。気合も入っていたしね」と評価した。
5敗目を喫し、自身の連勝は4でストップ。本拠地の阪神戦の5年ぶり白星も、持ち越しとなった。「反省するところは反省して、また良いピッチングができるように準備をしたい」と先を見据えた九里。痛い黒星となったが、信頼が揺らぐことはない。
2024年07月04日 08:00
3日に放送された『ニッポン放送ショウアップナイター 巨人−中日』で解説を務めた佐々木主浩氏が、巨人の4番・岡本和真について言及した。
佐々木氏は岡本について「よくなりそうな感じがあったんですけど、また元に戻る。なかなか戻ってこないですよね。成績はある程度残しているんですけど、物足りないのは率なんですかね。最低でも2割8分ですよね」と指摘した。
岡本はここまでリーグ2位の13本塁打、41打点はリーグ3位の成績も、打率は.255。3日の中日戦に8回の第4打席で適時打を放ったが、4打数1安打だった。
(ニッポン放送ショウアップナイター)
2024年07月04日 07:40
モーニング娘。'24の牧野真莉愛さんが「ABEMAスポーツタイム」に出演
「ABEMA(アベマ)」が6月30日に放送したスポーツ番組「ABEMAスポーツタイム」に、野球好きで知られるモーニング娘。’24の牧野真莉愛さんが出演し、現在はドジャースで活躍する大谷翔平投手との交流秘話を明かし、貴重な2ショット写真も公開した。
熱狂的な日本ハムファンとして有名な牧野さんは、日本ハム時代の大谷の応援歌をフルサイズで熱唱。また、以前に始球式の練習で球場に行った際に大谷と“遭遇”。「応援しています」と伝えたという。そして始球式当日には大谷から「頑張ってください」と声をかけられたエピソードを披露した。6月に好成績を残した大谷の活躍には「元々成績は素晴らしいけど、特に素晴らしい!」と喜んでいた。
牧野さんはさらにヤンキースの主砲、アーロン・ジャッジ外野手への“愛”も激白。「今でも結婚したいと思っている選手」とジャッジの魅力を語った。好きになったきっかけは、ヤンキース-レッドソックス戦の中継を見ていたときに乱闘が始まったことだったという。
ベンチから真っ先に出てきたジャッジが「『こっちに来るな!』とチームメイトのジョー・ケリー投手を守った。この姿を見て、『ジャッジってめちゃくちゃ紳士でカッコイイ!』と大好きになりました」と“告白”した。(Full-Count編集部)
2024年07月04日 07:20
◆ 悔しい逆転負けに…
初回から牧秀悟の好守でピンチを脱し、さらにはバットでも先制の3ランとキャプテンらしい仕事で流れを掴んでスタート。
2024年07月04日 07:20
ジャッジは打率.321、32本塁打、83打点…メジャー3冠王に君臨
■レッズ 5ー4 ヤンキース(日本時間3日・ニューヨーク)
ヤンキースのアーロン・ジャッジ外野手の打棒に、米も驚きを隠せないようだ。米データ会社「コーディファイ・ベースボール」が2日(日本時間3日)に投稿した“ある画像”が「世界でナンバーワンの選手」「馬鹿げてる」などと称賛を呼んでいる。
ジャッジは2日(同3日)、本拠地で行われたレッズ戦に「3番・指名打者」で先発出場。7回に2試合連発となる32号ソロを放った。シーズン59発ペースに達し、今季成績は打率.321、32本塁打、83打点、OPS1.158。メジャー3冠に浮上し、2012年ミゲル・カブレラ以来の3冠王の可能性も浮上している。
試合後、「コーディファイ・ベースボール」は自社X(旧ツイッター)に、「アーロン・ジャッジはスロースタートでも……なんということだ」と投稿。さらに、MLB公式サイトのデータサイト「ベースボール・サバント」に掲載されている、データ解析システム「スタットキャスト」を基にしたパーセンタイル・ランキングのジャッジの数字を添付した。
同ランキングは上位1%に入る選手を100とし、下位1%の選手が1と評価される。90以上=上位10%に入ると赤く表示されるのだが、ジャッジのページは文字通りの“真っ赤”。xwOBA(打球の角度や速度を元に得点を予想する期待値)、xSLG(打球の角度や速度を元に長打率を予想する期待値)、平均打球初速、バレル率、ハードヒット打球率が最高評価の100。xBAも98、バットスピードも99で、ほぼ球界トップの数字だった。
これを見た米ファンからは「みんなオオタニについて話してるけど、僕たちは忘れちゃいけない。ジャッジが今年あらゆる面でオオタニより優れていることを」「ジャッジに投球するのをやめろ」「嘘だろ?」などと絶賛の声があがった。
2022年にア・リーグ新記録の62本塁打を放った怪物。打低シーズンの中で、相変わらずの猛打を披露しており、今季も新たな伝説を作るのか。注目が集まっている。(Full-Count編集部)
2024年07月04日 07:10
笘篠誠治氏はユーティリティプレーヤーとして西武で活躍した
1983年から西武一筋で15年間プレーした笘篠誠治氏は、日米でトルネード旋風を巻き起こした野茂英雄を得意としていた稀有な選手だった。「癖を見つけていたんですよ」。おそらく“世界でただ一人”であろう野茂英雄の癖を見抜いた男。Full-Countのインタビューで、その全てを語った。
野茂は独特のトルネード投法を武器に、ほぼ直球とフォークボールだけで近鉄に入団した1990年から4年連続2桁勝利など、NPBでの5年間で78勝を挙げた難攻不落の右腕。西武が対戦する際は左翼で左打ちの安部理、吉竹春樹らが出場していたが、チームとしてなかなか打つことができずにいた。
「これ、野茂を打てたら試合に使ってもらえるんじゃないか」。右打ちの笘篠氏は食い入るように投球ビデオを見続けた。そして、ある“法則”に気づいた。
「野茂がトルネードになって背中をこちらに向けたとき、首の横あたり、右耳の近くにボールを握る右手がグラブから一瞬だけチラッと見えるんです。そのとき、小指の第2関節が立って(伸びて)いたらストレート。尖っている(曲がっている)とフォークだったんです。彼は小さめのグラブを使っていたので、小指が見えたんです」
癖を見つけたのち、笘篠氏が実際に野茂の打席に入る機会が訪れた。「100%合っていました」。球種が分かればフォークボールを見送ればほとんどがワンバウンドのボール球に。「カウント有利になって直球を1、2の3で打っていました。18.44メートル先で、一瞬見える小指ばかりを凝視していました」。
ただし、野茂が投げる際に大きく体を旋回させるのはワインドアップのときのみ。走者を背負ってのセットポジションだとフォームが違う。「なので、ランナーが出ないように、前の打者には凡退するように密かに願っていました」と笑った。口外するもりはなかったが…当時のコーチが自伝で“暴露”
出場機会を確保するため、自分だけの“武器”としていたが、1994年に打撃コーチに就任した谷沢健一から「なんでお前は野茂を打てるんだ」と聞かれ、明かした。すると「チームが勝つためにみんなに教えてくれないか」と懇願され、ついにミーティングでバラすことになった。
伝授したはいいが、あまりにも難解すぎた。石毛宏典は「遠いところの小指なんて見えないよ」。辻発彦は分かったそうだが「そこを見ていたら間に合わないから打てない」。結局は笘篠氏の“専売特許”になった。「僕は視力が悪くて、コンタクトをつけて1.2なんですけどね。そこだけはハッキリ見えていたんですよ」
野茂と主にバッテリーを組んでいた光山英和は大阪・上宮高の1年後輩。打席に入ると「トマさん、野茂の癖わかっているでしょ」とずっと囁かれていたという。わかっていることを隠すためにも「フォークボールが来ると知りながら、わざと直球のタイミングで空振りしていました」と細やかな努力も怠らなかった。
「ボール自体は凄いし、歳をとって打ち損じも増えていたので、通算成績で打率3割はいっていないんじゃないかな。でも1試合に1本は直球をヒットにしていましたよ」
本来は「わざわざ人に言う必要はない。墓場まで持って行くつもりだった」という。しかし「谷沢さんが自伝で書いちゃったんです。コーチ時代の話として。もう隠す必要がないんです」と苦笑い。だからこそ今、こうして聞くことができた。スター揃いのなかで、こんなしたたかな男がベンチを支えていた。西武黄金時代の強さを垣間見た気がした。(湯浅大 / Dai Yuasa)
2024年07月04日 07:00
ヤクルト・小川淳司GM(66)が、盟友の阪神・岡田彰布監督(66)との数々の思い出を明かした。日米大学野球で初めて言葉を交わしてから40年超が経過。立場を変えながらも同じ野球界で戦い続ける二人の関係に迫る。明かされた素顔とは−。
◇ ◇
岡田監督がどんな人かって?どんな人って言われても、私もそこまで深くを知っているわけじゃないよ。会話も野球の話以外はそんなにしないからね。
初めて会ったのは高校かな。2年生の頃、関西遠征に行った時に北陽高校で2試合やった。別に話をするわけでもなくて、会話したのは大学生になってから。日米大学野球で一緒になって、宿舎に雑魚寝で泊まった時だよ。(クリーンアップを組んだ)巨人・原前監督、岡田監督、私と3人で飯を食いに行ったね。何でか知らないけど、払ったのは私だから。おかしいだろう(笑)。
大学時代からそういう縁があったのは事実で、現役時代もかぶっているけど、向こうはスーパースターだった。監督として再会したのは2010年5月29日のオリックス戦。(高田監督が引責辞任して)監督代行になって、確か京セラドームだったと思う。最初の試合に(11−4で)勝って、チームの連敗が9で止まった。監督代行としての初勝利だよ。そうしたら、翌日に岡田監督がわざわざ「おめでとう」と言ってくれた。それが監督として初めて対戦した時の思い出かな。
あと岡田監督と言えば、2010年のドラフトだよ。私も2回抽選に外れて、岡田監督も外れた。3度目の山田哲人が競合して、一緒に壇上でくじを引くことになったんだよ。結果的にヤクルトが交渉権を獲得して、岡田監督は後藤駿太(現中日)を指名したんだけど、翌年の春のキャンプだったか。顔を合わせた時に、「駿太ってのはいい選手だぞ」って私に言ってきたの。山田を外したことは一切触れずに、な。何て言うのかな。そういう部分でも負けず嫌い。多分に感じた出来事だったよ。
岡田野球か。現役時代に記録として残してきたものが、後の評論家活動や監督になった時の考え方につながっているんだなって思ったのが2008年かな。当時高田監督の下、私はヘッドコーチでいて、1年間に148盗塁した年があるんだけどね。阪神の監督を終えた翌年の2009年、前年から他球団が要警戒してくる中で岡田監督だけが「もう絶対に走ってこない」と断言していた。
評論家の立場で言っていたのかはわからないけど、冷静にこと細かく見る力、分析力。監督をやる上において自分の中の考え方だったり、相手を見ることが戦略を立てていくことにつながっているのかなと、私は勝手ながらに思っていたよ。
岡田監督が評論家時代から飯食いに行ったり、スタンドで話したり、周りからもいろんな話を聞くと、やっぱり寂しがり屋だっていうね(笑)。でも結局、監督っていうのは孤独。やむを得ないんじゃないかなと思う。大学ジャパンのクリーンアップ3人で雑誌の表紙になった写真があるんだけど、岡田監督と原前監督…私も含めてみんなそろって監督をやれたこと。その写真が私の唯一の自慢、誇りだよ。
◆小川 淳司(おがわ・じゅんじ)1957年8月30日生まれ、66歳。千葉県出身。現役時代は右投げ右打ちの外野手。習志野高から中大、河合楽器を経て、81年度ドラフト4位でヤクルト入団。92年に日本ハム移籍後、同年現役引退。96年からヤクルトに復帰してヘッドコーチなどを歴任。10年からの5シーズンと18年からの2シーズンで1軍監督。19年オフにGM就任。