©sports-topics.net 2024
2024年07月02日 18:09
EURO2024で、苦しみながらもグループステージを突破したオランダ代表。中盤で唯一無二の存在のフレンキー・デ・ヨングが負傷で大会を欠場したものの、大黒柱のフィルジル・ファン・ダイクを中心とした堅守から攻撃に転ずるスタイルで、1988年以来の欧州王者の座を虎視眈々と狙っている。 その歴代のオランダ代表の中で、「デ・フローテ・フィール」(ビッグ4)と呼ばれた4人の天才に導かれ、10年のW杯で準優勝、その4年後の大会では3位と好成績を収めた世代がある。 国民1600万人の誇りであり、夢であった彼ら黄金世代の功績を振り返る。―――◆―――◆――― 1995年12月のボスマン判決後、エールディビジのレベルはスター選手の流出によって低下。00年のベルギーと共催したEUROでベスト4に終わったオランダ代表も、デニス・ベルカンプやデ・ブール兄弟ら中心選手が30代となり、世代交代という課題を抱えていた。しかし、オランダフットボールの低迷期は思いのほか短かった。 オランダ復活の要因のひとつが、83〜84年生まれで当時はまだ10代だったラファエル・ファン・デル・ファールト、ロビン・ファン・ペルシ、ヴェスレイ・スナイデル、アリエン・ロッベンの台頭だ。この4人は、ズラタン・イブラヒモビッチ(当時アヤックス)、小野伸二(当時フェイエノールト)、マテヤ・ケジュマン(当時PSV)らとともにエールディビジを再び活性化させ、欧州カップ戦で強豪クラブとタイトルを争えるレベルまで引き上げた。代表でも03年のEURO予選プレーオフ、スコットランドとの第2レグでファン・デル・ファールトとスナイデルがベテラン勢を引っ張り、6−0で大勝。オランダを本大会へと導いている。 育成大国オランダが輩出した4人の天才たちはビッグクラブへと羽ばたいていき、欧州の最前線でしのぎを削った。そんな彼らをオランダ人は特別な想いを込めて「デ・フローテ・フィール」と呼んだ。英語に直すと「ビッグ4」だ。【PHOTO】華やかで可憐なスタジアムの華!EUROで躍動する名手たちの妻、恋人、パートナーら“WAGs”を一挙紹介! 「4人とも『自分が最高の選手だ』と思っていた」 そうファン・デル・ファールトが述懐する通り、この世代に比類なき才能が集まった。そのエゴがひとつにまとまると、08年のEUROでイタリア(3−0)とフランス(4−1)を圧倒する破壊力抜群のオランダ代表が姿を現わす。しかし、彼らがまとまりを欠くと、12年のEUROのような3戦全敗の惨劇がオランダ国民を待ち受けていた。「デ・フローテ・フィール」は当時のオランダ総人口1600万人の誇りであり夢であると同時に、敗北の責任を負う立場でもあったのだ。 この4人より先輩の80年生まれで、欧州屈指のストライカーでありながら「デ・フローテ・フィール」のヒエラルキーに割って入ることのできない名手がいた。それがディルク・カイトだ。4人のような華麗なテクニックは持たなかったが、カイトは自身の能力を熟知していた。「レンガだけで家はできない。彼らをしっかりと繋ぎ合わせるセメント役が必要なんだ。それが僕だった」 その言葉通り、カイトは無尽蔵のスタミナと献身性を発揮して、彼らとともに10年のW杯準優勝、14年のW杯3位に大きく貢献した。 4人の天才たちは、14年のW杯でのファン・デル・ファールトのメンバー落ちに端を発して、一人また一人とオレンジ色のジャージを脱いでいく。その間、遅々として世代交代が進まず、オランダは16年のEURO、18年のW杯と連続でメジャー大会への出場権を逃し、暗黒の時代を迎えてしまう。 4人の中で最後までオランダ代表で戦い続けたのがロッベンだった。その最後の試合は17年10月、ロシアW杯予選の最終節スウェーデン戦だ。33歳のロッベンはキャプテンマークを巻き、鬼気迫る勢いでゴールを目指すと2度もネットを揺らしてみせた。自らのゴールでチームを勝利へと導いたロッベンだったが、虚しくもオランダはロシアW杯行きを逃してしまう――。 この時はまだ誰も気づいていなかった。スウェーデン戦で奪ったロッベンの2ゴールが、後のオランダ再興の礎になることを。この勝利でUEFAランキング(97年〜17年にかけてEURO予選や本大会のシードを決めるために使用された)で、オーストリアをかわして12位に浮上したオランダは、翌18年からスタートしたUEFAネーションズリーグで強豪国が集まる最上位のグループAに滑り込むことができたのだ。 その大会で主軸のフィルジル・ファン・ダイクやメンフィス・デパイ、若手だったフレンキー・デ・ヨングやマタイス・デ・リフトらが躍動。準優勝を果たして暗黒時代を脱し、再び国際舞台へと戻ることができたのだった。※ワールドサッカーダイジェスト5月2日号の記事を加筆・修正
2024年07月04日 20:05
ラツィオに所属していた鎌田大地のクリスタル・パレス移籍が決まった。
プレミアリーグでプレーする日本人選手はこれまでにも何人かいたが、地元のダービーマッチでの日本人対決は過去になかったはずだ。しかし今回、パレスに加入した鎌田とブライトンでプレーする三笘薫の2人がそれを実現させようとしている。
パレスとブライトンのダービーは、マンチェスターやマージーサイド、ノースロンドンのダービーほど世界的に有名ではないかもしれないが、イングランドのサッカーファンには、両クラブのファンの間に小さくない敵意があることで知られている。
この2チームの対戦は“M23ダービー”あるいは“A23ダービー”として知られており、ロンドンとブライトンを結ぶ高速道路にちなんで名付けられた。このライバル関係は、1970年から80年代にかけて両チームの間で行なわれた物議を醸す試合に遡り、その対立は現在も続いている。
近年のプレミアでは、観客同士のトラブルはあまりない。これは、警備が非常にしっかりしており、クラブがトラブル対策に投資しなければならないからだ。また、CCTVのおかげで、フーリガンも特定できるようになった。それでも、群衆のトラブルが発生した際、それがパレス対ブライトンの試合だったという話は珍しくない。両クラブの試合のキックオフ時間は、トラブルのリスクを減らすために非常に慎重に決められている。
【動画】鎌田がアニメで登場!パレスが公開したウェルカムムービー
両クラブの本拠地は43マイル(約70km)も離れているのだから、ライバル関係を築くには遠すぎると思うだろうが、単に距離の問題ではない。
例年、両チームは同じような成績を残しているため、互いの順位に関わる重要な試合で頻繁に対戦していることも起因していると思う。昇格争いや残留争いは、トップリーグで優勝することよりもはるかにストレスがかかる。彼らの未来が懸かっているのだから。これがファン同士の緊張を生んだ。
昨シーズンの初め頃、私はブライトンのアウェーでのマンチェスター・ユナイテッド戦を取材に行く際に、ロンドンからマンチェスターまで電車で移動していた。電車内はブライトンファンで満員になっていて、彼らはずっと歌っていた。しかし、彼らはブライトンやユナイテッドについて歌うのではなく、パレスに対する嫌悪感を歌にしていたのだ。その光景を見て、いかにパレスが嫌いなのかが伝わってきた。
三笘はすでにこのM23ダービーに出場した経験があるが、もちろん鎌田にとっては初めてだ。ぜひこの日本人対決に注目してほしい。
文●スティーブ・マッケンジー(サッカーダイジェスト・ヨーロッパ)
著者プロフィール
スティーブ・マッケンジー/1968年6月7日、ロンドン生まれ。ウェストハムとサウサンプトンのユースでプレー経験がある。とりわけウェストハムへの思い入れが強く、ユース時代からのサポーター。スコットランド代表のファンでもある。大学時代はサッカーの奨学生として米国で学び、1989年のNCAA(全米大学体育協会)主催の大会で優勝した。現在はエディターとして幅広く活動。05年には『サッカーダイジェスト』の英語版を英国で出版した。
2024年07月04日 20:00
Jリーグ史上最強のチーム鹿島アントラーズを率いた石井正忠監督は、昨年11月23日にタイ代表指揮官に就任した。
1999年にアカデミーのコーチから指導者キャリアを始め、2017年5月まで常勝軍団鹿島を約19年支え続けた。
Jリーグ、天皇杯、ルヴァン杯を制覇し、2016年に開催されたクラブワールドカップではJリーグクラブ史上最高成績となる準優勝へ導いた。
2021年からタイ1部ブリーラム・ユナイテッドの指揮を執り、2年連続で国内三冠(リーグ、協会オープンカップ、リーグカップ)を達成して前人未到の金字塔を打ち立てた。8月13日にタイ代表のテクニカルディレクター(TD)へと就任するも、9月18日に退任した。
紆余曲折を経てタイ代表に指揮官に就任した石井監督をQolyがインタビューを実施。
第4弾は大宮アルディージャ監督時代、無所属期間に勤めていた意外な職業、サポーターから気づかされた経験について語った。
※諸事情により1年前に取材した内容を掲載いたします。
(取材日2023年6月15日)古巣から突然のオファー
―-大宮アルディージャの監督に就任した経緯を教えてください。
最初に大宮へ行ったときは、リーグ戦(J1)がもう残り3試合でオファーを受けました。J1に残留したい想いで大宮はそういう決断をしたと。だからその3試合にまず指揮を執ってもらいたいということでした。だから本当に突然でびっくりしました。もともと大宮はNTT関東というところから始まっていて、僕は(現役選手時代に)NTT関東にいましたから。そこから「クラブを助けてほしい」というお願いがあって、応えたいと思ってオファーを受けたんです。苦しんだ大宮時代
――大宮はJ2に降格してしまいましたが、翌シーズンはJ1参入プレーオフで敗退。苦しい時期が続きました…。
まずJ2で戦うことが初めてでした。J2にどんなクラブがあるのかもまったく分からなかった。そこで最初につまずいたんですね…。だからそこが後々まで響いてしまった。それは経験のなさがあったと思いますね。1年でJ1に復帰するという想いでやったんですけど、そこが達成できなくて本当に悔しくて…。1年で復帰できなかったので、自分から「辞めます」とクラブに話しました。
――苦しい時期を過ごされた中、大宮で得た経験や知見はありましたか。
それは先ほど言った「J2での戦い方」がJ1とは違うと強く思いました。それは何かというと、J2は自分たちの良さを出して戦うというより、相手のストロングを消して戦うチームが多かった。そこはかなり戸惑った部分でした。そこをもうちょっと分かっていれば、違う戦い方ができたんじゃないかとすごく反省していますね。
――リーグが変わることによって当然状況は変わります。タイではつまずくことなく成功され続けています。環境の適用力や、選手やチームの特性・特徴を見抜く部分は大宮で培われたのでしょうか。
それもあります。最初はサムットプラーカーン・シティというタイ1部リーグでも中位にいたチームにいました。そこでも難しさは感じました。でも適応することは大宮時代に、しっかりリーグを見て、分析して戦わないといけないと学びましたよね。家族のために給食センターへ転職!
――大宮を退任されたあと、1年間休養を取られました。なぜこのタイミングに休養したのでしょうか。
いままでプロ選手としてやってきて、すぐアントラーズでコーチとして雇ってもらいました。またコーチもずっと長い間やっていて、監督になって、さらに家族との時間もなくなってということをずっと続けてきた。
ちょうどその年に娘が小学校6年生でした。これから中学校、高校と部活に入ったら家族との時間が本当になくなるなと思いました。なので、その1年は1回サッカーから離れた環境で、家族との時間を作ることが1番の理由ですね。
――鹿嶋市の給食センターの調理員をされていたとお聞きしました。給食センターではどのような仕事をされていましたか。
僕は(給食センターの)会社の社員になりました。実際に野菜を切ったり、料理を作る仕事はパートの方がメインでやります。調理をしたことは少ないんですけど、僕はそれをサポートする社員でした。
給食センターに勤めた理由は、「娘との時間を取るために1番どの職業がいいか?」と考えたときに、学校関係の仕事をすると娘とスケジュールが一緒になるからです。だからやってみようかなと思ったんですね。もともと僕の実家が日本料理屋で、料理も結構できるから興味はありました。それで思い切ってチャレンジしてみました。
――給食センターですと、夏休みや冬休みもスケジュールが合いますよね。
そうなんですよ(笑)。あと仕事の終わりが早いです。朝は早いんですけど、終わるのも3時ぐらいに大体終わります。例えば近所の子供と一緒にサッカーしたりとかもできるので、そういうのも含めて、時間を取るために給食センターに就職しました。
――給食センターから得た経験で、いまも生かせていることはございますか。
安全、安心に給食を作らなきゃいけないので、すごく衛生面がしっかりしています。あとグループワークが連動していてすごいんですよ。そういうところの仕事の細かさと、グループでしっかり仕事をやっていく部分。給食センターの現場リーダーの方が女性だったんですけど、その方がいろんなグループをまとめいく。組織をうまく動かすために何をしていたのかをよく見ていました。そこはサッカーと一緒で、勉強になりましたね。
――栄養学の面では学びはありましたか。
そこはそんなにですね。もともと体育大学を出ていて、そういう知識は少しはあったので。そこの部分ではないですけど、小学生は好き嫌いがあったりするじゃないですか、野菜が嫌いだったりね。好きなメニューのときには食べ残しが少ないんだけど、苦手なメニューなら残る量が多いことも。そういうのを見ていると、小学生年代の栄養指導は、もっとあってもいいかなと思いました。川崎であったサポーターとの出会い
――給食センターで働いている間は、年間パスを購入して鹿島を観戦していたと聞きました。お客さんの視点で得た学びはありましたか。
僕は鹿島に限らず、川崎フロンターレやガンバ大阪にも行っていたんですよ。サポーターの方々は、どれだけの想いで試合を見に来ているのか。何となく分かっていましたけど、実際に自分でやってみるのとでは違うじゃないですか。チケットを取って、電車を乗り継いでスタジアムで観戦するとか。自分で体験したくてやってみたんですよ。
だから鹿島スタジアムだったら、(自宅から)あっという間、すぐじゃないですか。でも、フロンターレに行ったときは雨の日で、最寄り駅でタクシーを待っている列がすごかった。川崎のサポーターが待っている中、僕も並んでいましたけど、「これ試合時間に間に合わないぞ」となったんですよ。
だからちょっと前の方で並んでいる川崎のユニフォームを着ている若いお兄ちゃんの近くに行って、「ちょっと一緒に乗せてよ」と言いました(笑)。同じタクシーに乗せてもらって「俺がお金払うから」と言ってね。それで一緒にスタジアムへ行ったんですよ。
そうしたら川崎のサポーターの子は、タクシーに乗ってちょっとしたときに「もしかして石井さんですか?」と気づかれて、「そうなんですけど」と言いました(笑)。
こうやって「サポーターの方がどんな感じでスタジアムに行っているのかを体験したくて一緒に乗せてもらったんだよ」と話をしたら、「僕らは年間シートを買って毎試合来ています」とね。
その子は川崎が本当に好きで「楽しいですよ。こういうのは」と話をしてもらうと、サポーターはどういう気持ちで見に行っているかが分かるじゃないですか。だからそういうことを体験したくて、やりましたね。
――その川崎サポーターさんが滅茶苦茶うらやましいです(笑)。
羨ましかったかどうかは分からないですけど(笑)。
――鹿島といえば、サポーターグループの「インファイト」の熱い応援が有名です。一緒に応援してインファイトはどうでしたか。
僕もJリーグが始まった当時から選手としていましたから、応援していただいているという気持ちはすごくありました。
それこそジーコスピリットじゃないですけど、ジーコさんは「あの人たちが自分たちの試合のチケットを買って、それがお前らの給料になっているんだから、彼らを愛さなきゃいけない。例えばサインしてくださいと言われたら、写真を撮ってくださいと言われたら、しっかり丁寧に対応しなきゃいけないんだよ」と、ずっと言われてきました。
ただただ、それを僕は実践しているだけです。だからそれはいまでもやっています。サムットプラーカーンに入ってからも、ブリーラムに行ってからも、ずっとそれは続けてやっています。
――石井さんにとってサポーター、選手を含めて鹿島はどのような存在ですか。
Jリーグの理想形を最初に実現させてくれたクラブだと思っているんですよね。だからJリーグの先頭に立って、いつまでも進んでいかなきゃいけないクラブだと思っています。クラブもサポーターもね。だからそういう存在でいなきゃいけないクラブだと思っていますね。
2024年07月04日 19:39
フットボールの母国イングランドに、またひとり日本代表戦士が上陸した。2023−24シーズンはラツィオに所属していた鎌田大地が、クリスタル・パレスにフリーで加入した。
移籍市場に詳しいファブリツィオ・ロマーノ記者によると、5月末時点ではイタリアのクラブと契約延長が既定路線だったが、金銭面での条件で最終的に破談。フランクフルト時代の恩師オリバー・グラスナーのラブコールに応じて、ロンドン南部のクラブに加入する流れとなった。
では日本でも屈指の技巧派MFは、フィジカル強度の高いことで有名なイングランドの地で活躍できるのだろうか。
【PHOTO】9頭身の超絶ボディ! 韓国チア界が誇る“女神”アン・ジヒョンの悩殺ショットを一挙チェック!
▼グラスナーの基本的なサッカー
まず筆者の所感を伝えると、鎌田は間違いなくクリスタル・パレスでフィット出来るだろう。
前提として、フランクフルト時代に共にヨーロッパリーグ(EL)を制したオーストリア人監督のサッカーを説明すると、3−4−3を基本システムとして採用しており、ビルドアップ時は3バックで組み立てる。相手のプレスの人数次第では、ボランチの選手が最終ラインに吸収されることもある。
こうして相手を引きつけた後に、相手のDFラインとMFの間で浮遊するもう一人のボランチやシャドーの選手に縦パスを供給。ボールを引き取ったアタッカーたちは、ドリブルやスルーパスを駆使して素早く攻めたてる。いわゆる擬似カウンターを好む。
引いて守るチームに対しては大外に張るウイングバックを使ってサイドから素早く崩してクロスを放り込む。あるいはワイドの選手を何度か使って、相手守備ブロックの横幅を広げて中央に隙間を作り出し、前線の選手たちの連携で崩す。
ただ、このようにボールを持つ展開でも必要以上にポゼッションすることを好まず、後方から厳しい縦パスや、ロングボールを放り込むことが多い。そうなると当然ボールを失うリスクはあるものの、素早い攻守の切り替えでボールを再び奪い返し、ピンチの芽を摘みつつショートカウンターに繋げていく。
こう書くと、ダイレクト寄りとはいえオーソドックスな3−4−3での戦い方にも読めてしまうだろうが、特徴的な点もある。グラスナーは2ボランチに攻撃的な選手を采配しているのだ。そしてこの特徴が鎌田にとって大きなメリットとなる。
▼鎌田のプレーポジション
現状の2ボランチであるアダム・ウォートンとウィル・ヒューズは共にかなりアグレッシブなタイプだ。EURO開幕前のボスニア・ヘルツェゴビナ戦でイングランド代表デビューを果たしたウォートンは、低い位置でボールを引き取り縦パスを当てる能力の高い選手だ。かなり狭い隙間でもどんどん縦パスを供給できるので、シャドーとしてライン間で受けることを好む鎌田としては最高の相棒になるだろう。
またイングランド人のヒューズは、元々2列目でプレーする知性と技巧を併せ持つタイプの選手だったが、現在のチームではボランチで出場している。余談だが元々賢い選手の上に口元に存在感のある髭を蓄えているためベテラン感たっぷりの選手だが、まだ29歳である。全くもって20代には見えない。
話を戻そう。そんなヒューズのような選手が3列目で使われている理由としては、おそらくグラスナーが縦パスを当てられる選手を好む点が一つ。二つ目は、ボランチの守備について、後方へのカバーより、前から刈り取りにいくスタイルを好んでいるからだろう。2列目の選手は往々にしてスペースを管理する後ろ向きの守備に慣れていない選手が多いものの、このサッカーではそれがデメリットになりにくい。
こうした点を踏まえると、鎌田自身のボランチ起用も考えられる。実際、フランクフルト時代、2021−22シーズンはシャドーでのプレー中心だったが、翌シーズンは半分くらいはボランチでプレーしている。
プレミアリーグがブンデスよりフィジカルな選手が多い点を加味すると、基本的にはシャドーでのプレーがメインになるだろうが、イングランドの強度に慣れたら一列ポジションを下げる可能性は十分にある。
二つプレー可能なポジションがあることは、鎌田の出場時間の観点で大きなメリットだ。
▼鎌田のライバルたち
さてそんなグラスナーの元でシャドーとして活躍しているのは、イングランド代表FWエベレチ・エゼとフランス五輪代表FWマイケル・オリースの2人である。二人とも高いアスリート能力と屈指の技術を併せ持つ逸材だ。前者の方がややドリブラー気質で後者がややパサー気質だが、近しいプレースタイルの選手の二人である。年齢はそれぞれ25歳と22歳で、移籍専門サイト『トランスファーマルクト』が算出した市場価値は二人とも揃って5500万ユーロ(約94億円)と高い価値を持つ選手だ。
対して27歳の日本人MFは1800万ユーロ(約31億円)で、これもこれで十分に高い価値ではあるものの、エゼとオリースからスタメンを奪うのは簡単ではない。ただ、後者はバイエルンの移籍に近づいており、そのポジションに鎌田が入ることになりそうだ。
他の2列目の選手で言うと、ガーナ代表FWの32歳ジョーダン・アユーと、同じくガーナ代表MFの31歳ジェフリー・シュルップがいるものの、前者はハードワーカー色が強いアタッカーで、シュラップはSB出身の選手でよりワイドなエリアでのプレーを得意とする。グラスナーのサッカーでは、鎌田の方が序列は上と見ていいだろう。
他にも元イングランドU-20代表の21歳ジェスラン・ラク=サキや、獲得の噂が上がっている若手選手など、実力が未知数のライバル候補はいるものの、いずれにしても現時点では鎌田が上と見ていいはずだ。
▼プレミアリーグへの適正は?
そしてプレミアリーグへの適性も問題ない。技術、俊敏性、サッカーIQを併せ持つ鎌田ならフィジカルコンタクトを避けながらプレー出来るだろう。ワンステップで強いボールを蹴れる点も、寄せが早いプレミアでは重要な資質。守備強度もシャドーなら問題ないはずだ。
唯一の懸念点は言語だろう。20年4月にフランクフルト公式HPに掲載されたインタビューでは「チームにはグループがあって、みんなで連絡を取り合っています。英語でもなんとかなるし、話の内容が理解できれば、ドイツ語も話すようにしている」と明かしているが現時点では、それがどの程度かはわからない。
とはいえ、監督は鎌田をよく知る人物だ。しかも先人たちの活躍もあり、イングランドにおける日本人のバリューはここ数年でかなり上がってきている。英高級紙『ガーディアン』でもこの移籍に対して「フランクフルトの一員として2022年にヨーロッパリーグを制覇して以来、鎌田はグラスナーと再びコンビを組むことになる」と紹介されている。
フリーでの移籍ではあるものの、名もなきアジア人ではなく、唯一のEL王者としてクラブに加入することになるのだ。少なくともマイナスからのスタートと言うことはない。
もちろんプレミアリーグのクラブにフィットするのは簡単ではない。相応の努力が必要だろう。それでも今の鎌田ならば、即フィットする可能性は十分あるのではないか。
文●内藤秀明
2024年07月04日 19:00
プレミアリーグのウェストハム・ユナイテッドとキットサプライヤーのUmbroは3日、2024-25シーズンに向けた新ホームユニフォームを発表した。
2024年07月04日 18:50
チェルシーは今夏の移籍市場でウインガーの獲得に尽力している。
『football.london』によると、チェルシーは今夏、PSVに所属するベルギー代表FWヨハン・バカヨコの獲得を目指しているという。
PSVのU-18出身のバカヨコは、現在21歳で右ウイングを主戦場とする選手。2022年7月にトップチームに昇格を果たした同選手だが、2年目となった23-24シーズンはリーグ戦33試合に出場し、12ゴール9アシストを記録するなど大ブレイク。クラブでの定位置を確固たるものにし、現在開催中のEURO2024のベルギー代表にも選出されていた。
そんな成長著しいバカヨコの獲得に関心を示すのがチェルシー。同クラブは今夏の移籍市場でウインガーの獲得を優先事項として掲げており、これまでにクリスタル・パレス所属のマイケル・オリーセやアスレティック・ビルバオ所属のニコ・ウィリアムズをリストアップ。しかし、両者共に実現が難しいことを受けて、今回新たにバカヨコをリストアップしたようだ。
同メディアによると、バカヨコは今夏の移籍市場での退団が既定路線となっており、ステップアップの可能性が高いとのこと。チェルシーの他にも、アーセナルやリヴァプールといったプレミアリーグのビッグクラブも関心を示していると報道されているが、新天地はどのクラブになるのだろうか。
2024年07月04日 18:40
トッテナム・ホットスパーは今夏の新戦力として、リーズ・ユナイテッドからMFアーチー・グレイの獲得を正式発表した。
リーズのU-18出身であるグレイは、2023年7月に同クラブのトップチームに昇格。迎えた23-24シーズンはリーグ戦44試合に出場し、慣れない右サイドバックとしても30試合出場するなど、高いユーティリティ性を発揮。英2部チャンピオンシップの最も優れた若手選手に贈られるヤング・プレイヤー・オブ・ザ・シーズンにも選出されるなど、飛躍の一年となっていた。
そんなグレイだったが、今夏の移籍市場で移籍を決断。新天地はプレミアリーグのトッテナム。今回の移籍理由についてグレイは以下のように語っている。
「トッテナムはビッグクラブなので、このオファーを断ることはできませんでした。私はアンジェ・ポステコグルー監督の下で行われる大規模なプロジェクトに惹かれ、自分も参加したいと思いました。また、私はセルティックの大ファンなので、ポステコグルー監督が大好きです。家族全員が彼を尊敬していますし、私にとって彼は本当に大きな存在です」
18歳にしてリーズの象徴として活躍していたグレイ。グレイの家系は代々リーズでプレイしてきたことで知られるが、家族のことに言及したのは古巣のファンが納得していないことを受けてのものかもしれない。トッテナムでその才能を更に開花させることはできるのか、期待したい。
2024年07月04日 18:30
アーセナルは、ボローニャに所属するDFリッカルド・カラフィオーリの獲得交渉に向けた準備を始めているようだ。
2002年5月19日生まれのカラフィオーリは現在22歳。昨夏にチアゴ・モッタ監督(現:ユヴェントス)の下、ボローニャで大ブレイクを果たすと、目下行われているEURO2024にもイタリア代表として出場。チームはラウンド16敗退となったものの、プレーした3試合で好パフォーマンスを見せた同選手は、自身の評価を高めていた。
そんなカラフィオーリを巡っては、複数のメガクラブが関心を示していたが、アーセナルが本格的に動き出そうとしているようだ。移籍市場に精通するジャーナリストのファブリツィオ・ロマーノ氏は、「アーセナルは、リッカルド・カラフィオーリの契約を巡って、選手側とクラブ側の双方に対する接触に向けたさらなる準備を進めている」と指摘。また、3年前のDF冨安健洋の獲得を境に、両者の関係は良好と併せて伝えている。
アーセナルは今夏、EURO2024でも活躍した新進気鋭のカラフィオーリ獲得に漕ぎ着けることができるのだろうか。
2024年07月04日 18:26
サンフレッチェ広島は7月4日、クラブの公式サイトでミヒャエル・スキッベ監督のコメントを掲載した。
2024年07月04日 18:12
日本サッカー協会は7月3日、パリ五輪に挑むU-23日本代表のメンバー18人とバックアップメンバー4人を発表した。
ドイツの大手紙『Bild』紙が驚きをもって報じたのが、ブレーメンのU-23チームに所属する佐藤恵允の選出だ。
「誰もリストに書いていなかった。ブレーメンの五輪サプライズ」と題した記事で、こう伝えている。
「ナビ・ケイタが母国ギニア代表としてオリンピックに出場するという事実は、多くのファンを驚かせた。しかし、数週間後にブレーメンで注目されることになる選手はそのMFだけではない。U-23日本代表のケイン・サトウだ」
【PHOTO】パリ五輪に挑むU-23日本代表18名とバックアップメンバー4人を一挙紹介!
記事は「少なくとも部外者にとって、選出は決して当然のことではなかった。結局、昨夏に明治大から来た左ウイングは(U-23チームが所属する)5部リーグでしか試合経験を積めなかった」と続けている。
ドイツではまだまだ無名の22歳の招集は、驚きを与えたようだ。
構成●サッカーダイジェストWeb編集部
2024年07月04日 18:00
フラム所属のポルトガル代表MFジョアン・パリーニャのバイエルン・ミュンヘンへの移籍が決定的となった。ドイツ紙『Bild』が伝えている。
身長190の恵まれた体躯を活かした守備だけでなく足元の技術にも優れた万能型の守備的ミッドフィールダーであるパリーニャをめぐっては、昨年夏にも両クラブは移籍について協議したが、2028年6月末までフラムとの契約が残っているパリーニャの移籍に伴って発生する移籍金の金額で折り合いがつかず、交渉は決裂していた。
今年もバイエルンが提示した4600万ユーロ(約80億円)の移籍金をフラムが拒否したことで交渉の行方が危ぶまれていたが、フラムの要求額との差は移籍後のパリーニャの活躍に応じて発生する追加のボーナスによって埋めることで両クラブは合意。あとは、フラムとの間で成立した契約をバイエルンの取締役会に諮って承認を得る作業だけが残っていると『Bild』は報じている。
パリーニャのバイエルン加入が秒読み段階に入ったことで、バイエルンが中盤の選手達の人員整理を行うのかが今後の注目点となりそうだ。現在、パリーニャと同じ中盤の底の位置を主戦場としている選手としてヨシュア・キミッヒ、アレクサンダー・パブロビッチ、コンラッド・ライマー、レオン・ゴレツカ、ラファエル・ゲレーロの5選手がいる。彼らの中で他クラブへ放出されたり、別のポジションへのコンバートを命じられる選手が出てくる可能性は十分にある。
新指揮官のヴァンサン・コンパニ監督は、果たしてどのような決断を下すのだろうか。
2024年07月04日 18:00
株式会社クラレは、この春小学校を卒業した子どもを対象に、「将来就きたい職業」のアンケート調査を実施。その調査結果を4日に発表した。
1位は今年も「スポーツ選手」。2位は「医師」、3位は「教員」となった。
「スポーツ選手」は、男子に圧倒的な人気で、競技内訳ではサッカー、バスケットボールの伸びが目立っている。
「医師」は2年連続でポイントを伸ばし、過去最高の2位に。6位「薬剤師」、10位「医療関係」もトップ10入りしており、今年は男女ともに医療職の人気が上昇した。
男女別に見ると、男子では2位に10ポイント以上の差をつけて「スポーツ選手」がトップ。
内訳を見ると、野球は1位をキープしつつもポイントを減らし、一方でサッカーは8ポイント以上アップ。野球とサッカーが肉薄する結果となった。
バスケットボールも昨年からポイントが約3倍にアップ。eスポーツはややポイントを下げたもののバスケに次ぐ位置に付けている。
女子では「漫画家・イラストレーター」が3年連続トップに。
内訳を見ると、イラストレーターが昨年の73.0%から88.9%とさらに増加(残り11.1%は漫画家)。ゲームやアニメなど多彩なコンテンツでイラストレーターの活躍が目立つなか、「将来は自分も」と夢見る子どもが増えているようだ。
なお、女子の「スポーツ選手」は昨年と同じ20位となっている。
大谷翔平は1位じゃない!1年あたりの世界最高給アスリート王
【調査概要】
調査対象:2024年3月に小学校を卒業した子ども
調査方法:使い終わったランドセルをアフガニスタンの子どもに贈る当社の国際社会貢献活動「ランドセルは海を越えて」キャンペーンにご協力いただいた方にアンケートを実施(2024年1月中旬〜3月中旬)
有効回答:男子314名/女子343名
2024年07月04日 17:30
チェルシーやアーセナルでプレイしたFWウィリアンはフラムからの契約延長のオファーを拒否したようだ。
2024年07月04日 17:19
オーストラリア代表のグラハム・アーノルド監督が日本との対戦に言及した。7月4日、豪州メディア『news.com.au』が伝えている。
先日、マレーシアのクアラルンプールで、北中米ワールドカップ・アジア最終予選の組み合わせ抽選会が行なわれ、オーストラリアは日本、サウジアラビア、バーレーン、中国、インドネシアと同じC組となった。
そんななか、同メディアのインタビューに応じたアーノルド監督は、このグループについて「日本が強い。FIFAランキング17位にランクインしているのには理由がある」と見解を示した。
【PHOTO】悲願のメダル獲得へ!パリ五輪に挑むU-23日本代表18名とバックアップメンバー4人を一挙紹介!
一方で「彼らは成長しているが、我々は日本から6、7位しか離れていない」と述べた上で、森保ジャパンとの対戦には「強いメンタリティを持って、自分たちを信じて戦うことが大事だ。選手たちにすでに伝えている目標は、グループで首位になることだ」と意気込んだ。
W杯最終予選では、5大会連続で日本と相まみえるオーストラリアは、どんな戦いを見せるのか。
構成●サッカーダイジェストWeb編集部
2024年07月04日 16:52
(随時更新)ドイツで開催中のサッカー欧州選手権(UEFA Euro 2024)で、AFPのカメラが撮影した写真の中から「TOPSHOT」をまとめた。
2024年07月04日 16:42
セリエAに初の日本人守護神が誕生するのか。
パリ五輪のメンバーから外れたシント=トロイデンの鈴木彩艶は、元アブスパ福岡監督のファビオ・ペッキアが率いるパルマからの関心が取りざたされている。地元メディアは7月3日、来季からセリエAに昇格する同クラブが、鈴木の獲得に近づきつつあると報じた。
昨年夏、マンチェスター・ユナイテッドからの関心が注目された鈴木だが、出場機会を重視してシント=トロイデンに移籍。2023-24シーズンは32試合に出場して50失点、クリーンシートは6回という成績だった。
今夏も再びユナイテッド移籍の可能性が噂され、ジョゼップ・マルティネスのインテル移籍が濃厚なジェノアからの関心も報じられた鈴木。だが直近になり、移籍市場に精通するジャンルカ・ディ・マルツィオ記者が、パルマとシント=トロイデンの交渉を報じていたところだ。
【PHOTO】コンセプトはFIRE(炎)! 日本代表が新ユニホームを発表! 久保建英、長谷川唯ら選手着用ショット!
そして3日、パルマ専門サイト『Parma Live』は「直近でスズキ獲得へ重要な加速があった。サプライズがなければ、彼が新たなファビオ・ペッキア監督の守護神だろう」と報じている。
「ベルギーメディアが報じたように、スズキはパルマのために五輪を断念すると決めた。さらに、シント=トロイデンはすでに代役獲得に動いている。ベンフィカとコクボ(小久保玲央ブライアン)を交渉しているのである。興味深いことに、彼もアフリカにルーツのある日本人GKだ」
パルマは元イタリア代表のジャンルイジ・ブッフォンや、元フランス代表のセバスティアン・フレイなど、かつて名手が活躍したクラブだ。もちろん、中田英寿氏が在籍したことでも知られる。
鎌田大地がラツィオを去り、日本人選手が不在のセリエA。鈴木は歴代14人目の「カルチョ界のサムライ」となるのだろうか。
構成●サッカーダイジェストWeb編集部